製造業DXの成功事例13選【領域別】|わかりやすい具体例と進め方
製造業DXの成功事例13選【領域別】|わかりやすい具体例と進め方
製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)は、単なるITツールの導入ではなく、データとデジタル技術を活用して製品・サービスやビジネスモデルを変革し、競争優位性を確立する取り組みです。しかし、「何から始めればよいかわからない」「他社の具体的な成功例を知りたい」と悩む企業は少なくありません。
本記事では、大手企業の大規模な改革から、身近な課題を解決したわかりやすい具体例まで、領域別に製造業DXの成功事例13選を徹底解説します。事例から読み解くDX推進のステップや、多くの企業が直面する「システム選定の壁(SaaSの罠)」を突破し、着実な第一歩を踏み出すためのヒントまで網羅しています。自社のDX戦略を具体化するためのヒントとしてご活用ください。
目次
製造業DXとは?なぜ今必要なのか(背景とメリット)
製造業DXの取り組み状況や基礎知識について、ここでは要点を絞って解説します。DXの定義や直面する課題の全体像についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご参照ください。
製造業のDXとは?IT化・IoTとの違いや直面する課題、解決策を徹底解説
DXと単なるIT化・デジタル化の違い
IT化やデジタル化は、紙の帳票をExcelに置き換えるなど「特定の業務プロセスを効率化する手段」です。対してDXは、デジタル化によって得られたデータを活用し、組織のあり方やビジネスモデルそのものを変革し、競争優位性を確立する「目的」を指します。製造業においては、単なるペーパーレス化にとどまらず、サプライチェーン全体や顧客への価値提供(アフターマーケットなど)を変革することが求められます。
製造業にDXが急務とされる背景
製造業でDXが急務となっている背景には、激化するグローバル競争や、事業環境の不確実性の高まりがあります。それに加え、国内特有の深刻な課題として「現場を支える人材の不足と技術継承問題」が挙げられます。熟練技能者の高齢化と退職が進む中、彼らの暗黙知をデータ化・標準化しなければ、品質の維持や生産活動そのものが立ち行かなくなるリスクを抱えているのです。
製造業でDXを推進するメリット
製造業がDXを推進することで、大きく以下のメリットが得られます。
- 業務効率化とコスト削減:手作業や転記業務を自動化し、リソースを最適化する。
- 品質管理の強化と異常の早期発見:IoTやAIを活用し、不良品の発生や設備の故障のリスクを低減する。
- 技術継承の円滑化:熟練者のノウハウをデータ化し、若手への教育や業務の標準化を実現する。
- データに基づく迅速な意思決定:現場と経営のデータを連携させ、市場の変化に迅速に対応するダイナミックケイパビリティ(企業変革力)を獲得する。
【領域別】製造業DXの成功事例・具体例13選
製造業におけるDXの具体的なイメージを掴むため、公的機関の資料(IPA「製造分野のDX事例集」や経済産業省「DXセレクション」等)に基づく成功事例を13社厳選して紹介します。
大手企業による大規模なDX成功事例
まずは、サプライチェーンやエンジニアリングチェーン全体を巻き込んだ、大手企業による大規模なDX事例です。
1. トヨタ自動車株式会社
- 取り組み内容:国内外の工場をネットワークでつなぐ「工場IoT基盤」を構築。設備稼働データや品質データをリアルタイムで収集・解析し、異常の早期発見や予防保全を実現。
- 成果:設備のダウンタイム削減、生産性の大幅な向上。グローバル規模でのデータ活用によるカイゼン活動の加速。
- 出典:IPA 製造分野のDX事例集
2. キリンビール株式会社
- 取り組み内容:熟練技術者の経験とノウハウに依存していたビールの醸造計画業務において、AIを活用した醸造計画立案システムを導入。
- 成果:熟練者で最大で1回あたり約6.5時間かかっていた計画立案業務を、約55分に短縮。技術継承の課題解決と業務の標準化を実現。
- 出典:IPA 製造分野のDX事例集
3. ダイキン工業株式会社
- 取り組み内容:空調機の製造現場において、熟練技能者の「手先の動き」や「力加減」をセンサーやカメラでセンシングし、データ化。AIを用いて解析し、技能訓練システムを構築。
- 成果:暗黙知であった熟練技能の形式知化に成功。若手作業者の育成期間を大幅に短縮し、グローバル拠点への技能展開を容易にした。
- 出典:IPA 製造分野のDX事例集
4. AGC株式会社
- 取り組み内容:化学プラントにおいて、過去の膨大な操業データと熟練オペレーターのノウハウを統合し、AIによる最適な製造条件の予測システムを構築(スマートファクトリー化)。
- 成果:品質の安定化と製造リードタイムの短縮。データに基づく意思決定により、属人的なオペレーションからの脱却を実現。
- 出典:IPA 製造分野のDX事例集
5. ヤマハ発動機株式会社
- 取り組み内容:「理論値生産」の考え方に基づき、生産ラインのさまざまなロスを極小化するため、IoTを活用して設備の稼働状況を可視化。データ連携基盤を構築し、経営目線でのデジタル改革を実行。
- 成果:グローバル全工場での生産状況のリアルタイム把握。ロスの特定と迅速な改善による生産効率の継続的向上。
- 出典:IPA 製造分野のDX事例集
6. 株式会社オークマ
- 取り組み内容:自社工場を次世代スマートファクトリー「Dream Core」として構築。IoTを活用して工作機械の稼働状況や加工データを収集し、自律的な生産最適化を実施。
- 成果:多品種少量生産における生産リードタイムの半減。高効率な生産体制の確立と、自社製品の顧客へのショーケースとしての価値創出。
- 出典:IPA 製造分野のDX事例集
7. 株式会社ダイセル
- 取り組み内容:化学プラントの運転において、AIとIoTを活用してオペレーターの意思決定を支援する「ダイセル式生産革新」を推進。知的統合生産システムを構築。
- 成果:プラントの安定稼働、エネルギー効率の向上、ヒューマンエラーの削減。他社へのソリューション外販という新たなビジネスモデルの創出。
- 出典:経済産業省 DX銘柄選定企業レポート
8. 沖電気工業株式会社(OKI)
- 取り組み内容:全国に分散する工場の生産リソース(設備・人員・部材)をデジタル上で統合し、1つの仮想的な工場として最適運用する「バーチャル・ワンファクトリー」を構築。
- 成果:工場間の負荷平準化、生産リードタイムの短縮、サプライチェーンの強靭化(レジリエンス向上)。
- 出典:IPA 製造分野のDX事例集
海外の先進的なスマートファクトリーの事例として、ドイツのシーメンスの取り組みを紹介します。
9. シーメンス
- 取り組み内容:ドイツ・アンベルクに位置する電子機器製造工場(EWA)において、産業用プログラマブルロジックコントローラ(PLC)等の制御機器を取り扱い、完全受注生産型のオペレーションを行っています。また、2030年までに同拠点へ2億ユーロ超を投資し、AI技術を活用した新しい工場棟を建設して製造・開発体制を拡充する計画を発表しています。
- 成果:1990年と比較して、工場面積と従業員数を維持したまま生産量(スループット)を1,400%(14倍)向上させました。
- 出典:Forbes、Siemens press
身近な課題を解決するわかりやすいDXの例
次に、特定の業務課題にフォーカスし、身近なところから着実に成果を上げたわかりやすい事例を紹介します。
10. 株式会社アイデン
- 取り組み内容:制御盤の製造において、図面や部品情報、進捗状況を一元管理する独自の製造実行システム「IWS」を構築。紙の図面や帳票をデジタル化し、現場のタブレットで情報共有。
- 成果:情報探しの時間削減、ポカミスの防止。多品種少量生産における生産効率が大幅に向上し、ペーパーレス化を実現。
- 出典:IPA 製造分野のDX事例集
11. 旭鉄工株式会社
- 取り組み内容:古い設備にも後付けできる安価なIoTセンサーを自社開発し、工場の主要な設備の稼働状況をクラウド上でリアルタイムに見える化。
- 成果:設備の停止理由を明確化し、改善活動を徹底したことで、設備稼働率が大幅に向上。数億円規模の新規設備投資を不要にした。
- 出典:経済産業省 DXセレクション
12. 株式会社今野製作所
- 取り組み内容:特注品の板金加工において、見積もりから設計、製造に至る一連のプロセスをITツールで連携。顧客要望に迅速に応える「プロセス連携型」のDXを推進。
- 成果:見積もり回答スピードの大幅な向上、部門間の情報伝達ミスの削減。顧客満足度の向上による受注拡大。
- 出典:IPA 製造分野のDX事例集
中小製造業のDX成功事例12選!失敗を防ぐための進め方と受発注デジタル化の第一歩
人材育成にフォーカスしたDX事例
DXを推進する上で不可欠な「人材」に焦点を当てた事例です。
13. 三和工機株式会社
- 取り組み内容:設計業務の効率化を目指し、外部ベンダーに丸投げするのではなく、自社社員をローコード/ノーコードツールを活用できる「デジタル人材」として育成。
- 成果:現場の課題を最もよく知る社員自身が業務改善アプリを開発する文化が定着。業務効率化と同時に、組織全体のデジタルリテラシーが底上げされた。
- 出典:IPA 製造分野のDX事例集
製造業DXが進まない理由と失敗してしまう原因
多くの企業がDXに挑戦する一方で、途中で頓挫してしまうケースも少なくありません。ここでは、製造業DXを阻む壁と、失敗を招く典型的な4つの原因パターンを解説します。
なお、「実際にどのようなプロジェクトが、なぜ失敗に終わってしまったのか」というリアルな失敗事例と、そこから学ぶべき教訓については、以下の記事で詳しく解説しています。他社の轍を踏まないためにも、ぜひあわせてご参照ください。
レガシーシステムの存在とデータの分散
長年改修を重ねてきた古い基幹システム(レガシーシステム)がブラックボックス化していると、新しいデジタル技術との連携が困難になります。工場ごとに異なるシステムが稼働し、データが分散している状態では、全社的なデータ活用が進みません。
部門間のデータ分断による全体最適の欠如
設計、調達、製造、営業といった各部門が個別にシステムを導入している場合(サイロ化)、データが分断されます。製造業DXの目的はサプライチェーン全体の最適化ですが、部門ごとの部分最適にとどまってしまうと、期待した投資対効果は得られません。
現場と経営の情報連携不足
経営層がトップダウンでDXを掲げても、現場の業務実態や課題を無視したツールを押し付けると、現場の反発を招きます。逆に、現場主導のボトムアップ活動だけでは、全社的なビジネスモデルの変革には至りません。経営と現場の目線が合っていないことが、推進力を削ぐ大きな原因です。
成果の不可視化と導入コストの壁
IoT機器やAIシステムの導入には初期投資が伴います。しかし、導入によって「どれだけコストが削減できるか」「どれだけ売上が伸びるか」という成果(ROI)が可視化しにくいため、経営陣の投資判断が下りず、実証実験(PoC)の段階で終わってしまうケースが多発しています。
製造業DXを成功に導く推進ステップとポイント
失敗の罠を避け、着実にDXを推進するための手順とポイントを解説します。
DXを推進するための4つのステップ
- DX推進の目的と課題を明確に定義する:
単なる「ITツールの導入」を目的とせず、自社のビジネス課題(リードタイム短縮、技術継承など)を解決するためのゴールを設定します。 - 経営と現場が一体となった推進体制を整える:
経営層がコミットメントを示し、現場のキーマンを巻き込んだ横断的なプロジェクトチームを組成します。 - 小さくはじめて実行し、成果を積み重ねる:
最初から全社一斉導入を狙うのではなく、特定のラインや業務(例:受発注のペーパーレス化)からスモールスタートし、成功体験を作ります。 - データを蓄積・管理し、成果指標を設定して効果を継続的に測定する:
KGI・KPIを設定し、データに基づいて施策の軌道修正を繰り返します。
DXを成功させるための重要ポイント
DXを成功させる鍵は、既存の業務プロセスをそのままデジタル化するのではなく、「全体最適の視点でプロセスを再設計する」ことにあります。また、自社の商習慣や業務に本当に適したデジタルツールを選定すること、そして全社員が「なぜこの変革が必要なのか」という目的を共有し、個人・部門間の連携を強化することが不可欠です。
DX推進に不可欠なサイバーセキュリティ対策(OTセキュリティ)
工場のIoT化やサプライチェーンのデータ連携が進むと、外部ネットワークとの接点が増え、サイバー攻撃のリスクが急増します。実際に、ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)によるサイバー攻撃で工場が操業停止に追い込まれる事例も発生しています。
そのため、従来のIT(情報技術)のセキュリティだけでなく、工場内の制御システムを守る「OT(制御技術)セキュリティ」の対策が製造業DXには必須となります。ネットワークの分離(セグメンテーション)や、異常を検知するシステムの導入、そして従業員へのセキュリティ教育を、DXの計画段階から組み込んでおくことが重要です。
スマートファクトリーのセキュリティ対策とは?ネットワークとシステムを守る具体策とガイドライン
製造業DXの導入コストと期間の目安
DX推進にかかる費用や期間は、取り組む領域の広さやシステムの構築方式によって大きく変動します。事例を参考に自社での導入を検討する際は、以下の目安を参考にしてください。
スモールスタート(局所的なデジタル化)
特定の業務プロセスに絞ってデジタル化を進めるフェーズです。
- 対象例:受発注業務のWeb化、既存設備への安価なIoTセンサーの後付け
- 期間の目安:1〜3ヶ月程度
- 費用の目安:数十万〜数百万円
既存のSaaSを利用したり、小規模なツールを導入したりすることで、短期間かつ低コストで着実な成功体験を積むことが期待できます。実際に、身近なツールを用いてスモールスタートから成果を上げた事例があります。
有限会社光成工業の事例
営業と製造現場間の情報共有基盤(受発注表)や日々の作業日報を、ノーコードツール「kintone」を利用してデジタル化しました。結果として、日報アプリの入力率は導入当初の20%から81%まで上昇しました。受注担当者の作業効率が従来の1.5倍に向上し、月に約70時間発生していた残業時間をゼロに削減したほか、ペーパーレス化の推進により年間で約2万枚の紙を削減しました。導入後の4年間で会社の年間売上高は約30%増の約5億円となっています。
出典:ASCII.jp、サイボウズ株式会社
中規模なシステム連携・業務適応型の構築
複数の部門をまたぐデータ連携や、自社の複雑な商流に合わせたシステムを構築するフェーズです。
- 対象例:基幹システム(ERP)と連携した受発注基盤の構築、部門間のデータ統合
- 期間の目安:3〜6ヶ月程度
- 費用の目安:数百万円〜数千万円
パッケージソフトの導入や、EC-CUBEなどのOSS(オープンソース)をベースにしたカスタマイズ構築がここに該当します。SaaSの標準機能では対応できない独自の業務要件をシステム化する際に選ばれます。
大規模な全社刷新・スマートファクトリー化
全社的なビジネスモデルの変革や、サプライチェーン全体を統合するフェーズです。
- 対象例:工場全体のIoT基盤のフルスクラッチ開発、レガシーシステムの全面リプレイス
- 期間の目安:半年〜数年以上
- 費用の目安:数千万円〜数億円規模
大規模な投資と長期間のプロジェクトとなるため、事前の綿密な要件定義と、経営層の強力なコミットメントが不可欠です。
このように、いきなり大規模な刷新を狙うとコストも期間も膨大になり、失敗のリスクが高まります。まずは「スモールスタート」で現場の反発を抑えつつデータを蓄積し、段階的に中規模・大規模へと拡張していくアプローチが成功への重要なポイントです。
DX推進に活用できる主な補助金・助成金
導入コストの壁を乗り越えるためには、国や自治体が提供する補助金・助成金制度の活用も有効な手段です。製造業のDX推進によく利用される代表的な制度には以下があります。
- IT導入補助金:
受発注システムや業務効率化ツールの導入費用の一部を支援。スモールスタートや中規模なシステム導入に適しています。 - ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金):
革新的な製品・サービスの開発や、生産プロセスの改善に向けた設備投資・システム構築を支援します。 - 事業再構築補助金:
新分野への展開や業態転換など、思い切ったビジネスモデルの変革(大規模なDX)に挑戦する企業を支援する制度です。
※ 各補助金は公募期間や要件が毎年更新されるため、導入検討の際は必ず経済産業省や中小企業庁の公式サイトで最新情報を確認してください。
製造業DXにおけるシステム選定の壁
DXの第一歩として多くの製造業が取り組むのが、受発注や保守部品販売のデジタル化です。しかし、ここで多くの企業が「システム選定の壁」に直面します。
受発注システムの4つの構築方式
受発注のWeb化には、SaaS型(低コスト・短期間だが仕様に業務を合わせる必要がある)、パッケージ型(設定範囲内でカスタマイズ可能)、フルスクラッチ開発(自由だが数千万円規模・半年以上)、そしてOSSベースの構築(EC-CUBEなどを土台に業務要件へカスタマイズする中間的な方式)の4つの選択肢があります。取引先ごとの価格条件や基幹システム連携など、SaaSの標準機能を超える要件がある場合はOSSベースが有力な選択肢になりますが、SaaSより構築期間と初期費用は大きくなります。
SaaSの罠と現状維持のジレンマ
製造業の受発注業務において、最大の競合は他社システムではなく「Excel+FAX+紙の現状維持」です。転記・手入力・電話確認に費やされる時間=人件費という「放置のコスト」は甚大ですが、現場を責めることはできません。レガシー業務は、取引先の都合やベテランの例外処理など、合理的な理由で維持されているからです。
ここで安易に汎用SaaSを導入すると、標準化を強いられるため、得意先別価格・代替品番・独自の承認フローなどの例外処理に対応できず、結局システムの外でExcelとFAXが復活し、二重管理に陥るという「SaaSの罠」に直面します。一方でフルスクラッチ開発はコストが膨大で技術的負債のリスクが高すぎます。結果として、多くの企業がDXの入り口で身動きが取れなくなってしまうのです。
製造業DXの着実な第一歩
業務のやり方を変えず、媒体だけをデジタルに置き換える
この行き詰まりを打破する第一歩として有効なのは、最終的なプロセス再設計を見据えつつも、まずは「現場の業務負担を急激に変えず、媒体(FAX・電話・紙)のデジタル化から着手する」ことです。
現場や取引先の反発は「やり方が変わること」から生まれます。したがって、取引先にはこれまで通りFAXのままでいてもらい、受け取る側(自社)でデジタル化する仕組みを構築すれば、反発を抑えやすくなります。
IoT連携や予兆コマースといった高度なDXを最初から目指す必要はありません。まずは既存の業務フローを維持したままデジタル化し、そこで生まれる正確な受注データを蓄積することが、将来の拡張(在庫最適化やアフターサービス収益化など)へと続く強固な土台となります。
業務適応型コマース基盤「EC-CUBE Enterprise for AfterMarket」
システムに業務を合わせない「持ち家」のアプローチ
独自の商流や基幹連携に対応しつつ、フルスクラッチほどのコストをかけずにDXを実現する第三の選択肢が、OSSベースの業務適応型コマース基盤「EC-CUBE Enterprise for AfterMarket」です。
SaaSのように「システムに業務を合わせる」妥協を強いることなく、企業固有の複雑な商流に合わせてシステムを最適化し、ソースコードや顧客データを自社の「デジタル資産(持ち家)」として所有・蓄積できることが大きな特長です。
保守部品販売・BtoB受発注を支える主要機能
産業機器・業務用機器メーカーの受発注DXを推進するため、以下のような機能を提供します。
- FAX受注自動化(AI-OCR):
既存のFAX受注の仕組みはそのままに、AI-OCRで受注入力作業を自動化。取引先にはFAXのままでいてもらえる「やり方を変えない第一歩」の中核機能です。 - 保守部品販売・BtoB受発注のデジタル化:
電話・FAX・メール中心の受発注をWebに置き換え、確認・転記の負荷を軽減します。 - パーツセレクター:
図面やBOM(部品表)の情報を読み取り、設計意図に合った最適な部品の選定や標準部品とのマッチングの自動化を支援します。 - 納入機器と適合部品の紐づけ:
顧客ごとの納入機器情報と適合部品を紐づけて管理し、問い合わせ対応の負荷を軽減します。 - 代理店商流・顧客別条件・基幹システム(ERP)連携:
代理店商流・取引先階層・顧客別価格・部門内承認・既存基幹連携など、企業ごとの商習慣に合わせて構築可能です。 - 予兆コマース(将来の拡張):
蓄積されたデータを基盤とし、将来的な拡張として、設備・機械の稼働データとAIの予兆検知を組み合わせ、異常の兆候から保守部品の見積・受注につなげる仕組みの構築も視野に入ります。
BtoB受発注DX・複雑な商流のデジタル化実績
EC-CUBEは、BtoB特有の複雑な商流や大規模なデータ連携を解決する基盤として、豊富な実績を持っています。以下は、BtoB受発注DXにおける代表的な実績です。
約1万アイテムのBtoB受発注網の刷新事例
UCCコーヒープロフェッショナル株式会社様では、複雑なBtoB物流と大規模な受発注網のデジタル化を実現しました。
基幹・倉庫データ連携のBtoB EC事例
オフィスコム株式会社様では、基幹システムおよび倉庫データとの深い連携を実現し、業務効率を大幅に向上させています。
複雑な商流(自動見積・ロット別価格)のデジタル化事例
敷島産業株式会社様では、ノベルティ製作における自動見積やロット別価格といった独自の商流をシステム化しました。
業務整理から伴走する「EC-CUBE Industry Experts」
「システムは作れるが自社の複雑な業務を理解してもらえない」とお悩みの場合は、業界実務を知る専門家が事業の目的から業務課題と実現方針を整理し、システム構築まで伴走する支援サービス「EC-CUBE Industry Experts」もご用意しています。
製造業のDX化に関するよくある質問
- 製造業のDXはどこから始めるべきですか?
-
いきなり高度なIoTやAIの導入を目指すのではなく、まずは現場の課題に直結する「受発注業務のペーパーレス化」や「FAX受注の自動化」など、既存の業務フローを大きく変えずにデジタル化できる領域からスモールスタートすることが推奨されます。
- 製造業における「デジタル化事例」と「DX事例」の違いは何ですか?
-
「デジタル化事例」は、紙の帳票をデータ化するなど、特定の業務プロセスを効率化する局所的な取り組みを指します。一方「DX事例」は、デジタル化によって得られたデータを活用し、生産体制の抜本的な見直しや、新たなビジネスモデル(保守サービスの収益化など)の創出に至った、組織全体の変革を伴う取り組みを指します。
まとめ
製造業DXを成功させるためには、最新技術の導入を急ぐのではなく、まずは現場の業務フローを維持したまま、受発注の入り口をデジタル化することが重要です。自社の商流に合わせた柔軟なシステム基盤を選ぶことで、将来の高度なDXに向けた着実な第一歩を踏み出すことができます。
FAX・電話・紙の受発注がWebでどう変わるか、機能ごとの実現イメージをまとめた図解資料を、画面のフォームからお受け取りいただけます(入力はメールアドレスのみ)。


