マルチテナントとは?シングルテナントとの違いやメリット・デメリットを徹底解説!ECシステム構築におけるマルチテナント型の課題や最適なプラットフォーム選びのポイントまで紹介
EC市場の拡大とともに、ECサイトに求められる役割はますます高度化しています。単に商品を販売するだけでなく、複数チャネルとの連携、顧客体験の向上、運用効率化、将来的な事業拡大まで見据えたシステム設計が重要視される時代になりました。
その中で近年注目されているキーワードの一つが「マルチテナント」です。特にクラウド型サービスやECプラットフォームを検討する場面で耳にする機会が増えていますが、「具体的にどのような仕組みなのか」「自社に適しているのか」まで正しく理解できているでしょうか。
本記事では、マルチテナントの基本的な意味や仕組み、メリット・デメリットについて分かりやすく解説します。さらにEC事業者がシステム選定時に押さえておきたいポイントや長期的な事業成長を見据えた最適なECプラットフォーム選びについても詳しく掘り下げます。
目次
マルチテナントに関する基礎知識

マルチテナント方式(マルチテナント型)の定義
マルチテナント方式(マルチテナント型)とは、1つのシステムやサーバー、データベースなどのリソースを、複数の利用者(テナント)で共有して利用する仕組みのことです。ここでいう「テナント」とは、サービスを利用する企業や組織、店舗などを指します。
例えば、1棟のビルを複数企業で利用する「テナントビル」をイメージすると分かりやすいでしょう。建物自体の設備は共有しながら、各企業はそれぞれ独立したオフィス空間を利用しています。マルチテナントもこれに近く、同じシステム基盤を共有しながら各利用者が独立した環境としてサービスを利用する形です。
近年のクラウドサービスやSaaS型サービスでは、このマルチテナント方式が広く採用されています。1つのシステムを複数企業で共同利用すれば、サービス提供側はインフラや保守運用のコストを効率化でき、利用者側も比較的低コスト・短期間でサービスを導入できるというメリットも魅力です。
EC業界においてもASP型ECカートやSaaS型ECプラットフォームの多くがマルチテナント方式を採用していますが、一方で、共有環境ならではの制約やカスタマイズ性の限界が発生するケースもあるため、仕組みを理解した上で導入判断を行うことが重要になります。
クラウド・仮想化・ネットワークにおけるマルチテナントの仕組み
マルチテナントは、単に「複数ユーザーで同じサービスを使う」というだけではなく、システムの様々な階層で技術的に実現されています。代表的なのが、クラウド層・仮想化層・ネットワーク層といったレイヤーでの共有です。
クラウド層(SaaS)
一般的なSaaS/ASP型サービスでは、1つのアプリケーションを複数テナントで共同利用します。例えばECプラットフォームやCRMサービスでは、同じプログラムをベースにしながら、ログイン情報や契約内容によって各企業ごとの画面やデータ領域を切り分けています。運営会社は1つのシステムを管理するだけで良く、アップデートや保守を効率的に行えます。
仮想化層(サーバー)
通常、ホスティングサーバーでは1台の物理サーバー上に複数の仮想環境を作成し、それぞれが独立したサーバーのように利用されています。クラウドインフラで広く使われている技術であり、リソースを効率良く分配しながら一定の独立性も確保できます。
ネットワーク層
ネットワーク層においては、VLANや仮想ネットワーク技術などを用いて、同じ物理ネットワーク上でもテナントごとに通信経路を分離します。これにより異なる利用者間でデータや通信が混在しないよう制御しています。
マルチテナントにおけるデータの持ち方
マルチテナント方式では、「各テナントの保有するデータをどのように分離するか」も重要な設計ポイントです。主な方式として以下のようなパターンがあります。
DBもテーブルも完全共有する方式
最も共有度が高い方式です。1つのデータベース・1つのテーブルを全テナントで共用し、「テナントID」などでデータを識別します。運用効率やコスト効率に優れる一方、設計やアクセス制御を誤ると他テナントのデータ参照リスクが発生する可能性があります。
DBは共有しつつ、スキーマやテーブルで分離する方式
データベース自体は共有しながら、テナントごとにスキーマやテーブルを分ける方式です。完全共有型より独立性が高く、管理性やセキュリティ面のバランスを取りやすい構成とされています。
※スキーマ:データの構造や関係性を定義した設計図にあたるもの
テナントごとにDBを物理分離する方式
テナント単位でデータベース自体を分離する方式です。データ独立性やセキュリティ性に優れる反面、運用コストや管理負荷は高くなります。大規模企業向けサービスや、高いセキュリティ要件が求められるケースでは採用される場合があります。
マルチテナントサービスの具体例
マルチテナントは、現在利用されている多くのクラウドサービスやSaaSに採用されており、膨大なユーザーに効率的かつ低コストでサービスを提供する上で欠かせない仕組みとなっています。
ビジネスや日常生活では、具体的には次のようなWebサービスで活用されています。
Webメール
例えば「Gmail」に代表されるWebメールサービスは身近なマルチテナントサービスの一つです。
複数ユーザーが同じメールシステム基盤を利用していますが、利用者ごとのメールボックスやアカウント情報は分離されています。これによりサービス提供側は大量ユーザーに効率的にサービスを提供できます。
CRM・グループウェア
「Salesforce」などのCRM(顧客管理システム)や「サイボウズ」などのグループウェアもマルチテナントサービスです。
企業ごとに管理画面や顧客データは独立していますが、アプリケーション基盤は共通であり、アップデートや新機能追加もサービス側で一括実施されるため、利用企業は常に最新環境を利用できます。
ECプラットフォーム
「Shopify」「BASE」などのSaaS型ECプラットフォームや「Yahoo!ショッピング」などのECモールもマルチテナント方式を採用しています。
複数のEC事業者が同一システムを共有しながら、それぞれ独立したECサイトを運営する形です。導入スピードや低コスト運用に優れる一方、システム共通化の影響でカスタマイズ範囲が制限されるケースもあります。
テナント概念がないシステムとの違い
従来型のシステムは「1つのシステムを1つの組織・業務が利用する」という前提で設計されているのが一般的でした。そのため、利用者や部署ごとの権限管理は存在していても、「複数企業(テナント)が同じ基盤を共有利用する」という考え方自体を持っていません。
一方、マルチテナント型システムでは、1つのシステム上で複数の企業や店舗、サービス利用者を独立した単位として管理します。単なる「複数ユーザー利用」ではなく、それぞれのテナントごとに、ユーザー情報・商品情報・契約情報・データ領域などを分離しながら、共通基盤上でサービス提供を行う点が大きな特徴です。
このテナント管理の仕組みがあると、以下のような機能を実現できます。
- 複数店舗・複数企業へのサービス提供
- テナントごとの管理画面や権限管理
- 契約プラン別の機能制御
- テナント単位でのデータ分離
- モール型ECやSaaSサービスの運営
逆に、テナントという概念を持たないシステムでは、上記のような複数組織を横断した統合管理やサービス提供型ビジネスの実現は難しくなります。
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自社要件を相談する
マルチテナントとシングルテナントの違い

マルチテナントを理解する上で、対比されることの多い「シングルテナント」の考え方も押さえておきましょう。両者はシステムの構造そのものが異なり、コストや運用性、拡張性にも大きな違いがあります。
シングルテナントとは
シングルテナントとは、顧客(テナント)ごとに専用のサーバーやシステム環境、データベースを個別に構築・利用する方式のことです。
マルチテナントでは複数企業が1つのシステム基盤を共有しますが、シングルテナントでは1社ごとに独立した環境を持つため、他社とシステムリソースを共有することはありません。
そのため自社のシステム環境が他社の利用状況による影響を受けにくく、独自要件に応じた柔軟なカスタマイズもしやすい特徴があります。一方で、企業ごとに環境を構築・管理する必要があるため、導入コストや運用負荷は比較的大きくなります。
近年はSaaS型サービスの普及によりマルチテナント方式が広く採用されていますが、大規模ECや独自業務フローを持つ企業ではシングルテナント型が選ばれることが多いです。
マルチテナントとシングルテナントの比較
マルチテナントとシングルテナントには、それぞれ異なる特徴があります。どちらが優れているというよりも、自社の事業規模や運用方針、将来的な拡張性を踏まえて選定することが重要です。
両者の主な相違点を表にまとめましたのでご覧ください。
| 比較項目 | マルチテナント | シングルテナント |
|---|---|---|
| システム構成 | 複数企業で同一基盤を共有 | 企業ごとに専用環境を構築 |
| 初期コスト | 比較的低い | 高くなりやすい |
| 構築スピード | 早い | 個別構築のため時間がかかる |
| カスタマイズ性 | 制限される場合が多い | 高い自由度を確保しやすい |
| システム拡張性 | 共通仕様に依存 | 自社要件に応じ柔軟に対応可能 |
| セキュリティ | 共有環境前提の管理 | 環境分離による高い独立性 |
| 他社影響 | リソース共有の影響を受ける可能性あり | 他社影響を受けにくい |
| 運用保守 | 提供事業者側で一括管理されやすい | 個別対応が必要 |
| アップデート | 全体一括更新が基本 | 個別調整が可能 |
マルチテナント型システムを利用するメリット

既にご説明したように、マルチテナント型システムはサービス提供事業者が用意した共通のシステム基盤を複数の利用者で共有する構造となっています。近年はクラウドサービスやSaaSの普及により様々な分野で主流の構成となっており、特に導入初期や運用面において大きな優位性を持つものです。ここではマルチテナント型システムを利用することで得られる代表的な3つのメリットを整理します。
①スピーディに環境を構築できる
既に構築済みのシステム基盤を利用するため、ゼロからサーバーやシステムを設計・構築する必要がありません。基本的にはアカウント発行後、初期設定などを行うだけでスピーディに利用を開始できます。
また多くのサービスでは、業務に必要な基本機能があらかじめ用意されており、専門知識がなくても比較的短期間で運用開始できる点も魅力です。
近年ではノーコード・ローコード対応が進んでいるサービスも多く、テンプレートやアプリ追加によって一定レベルの環境構築を容易に行えるようになっています。
②低コストで利用できる
マルチテナント型では、サーバーやインフラリソース、アプリケーション基盤を複数社で共有しています。そのためサービス提供者側は、サーバー構築・インフラ保守・システム開発・セキュリティ対策・バージョンアップ対応など様々なコストを効率的に分散でき、利用企業側も比較的安価にサービスを利用できます。
初期費用無料~数万円程度で始められるサービスも多く、初期投資を抑えながらシステム導入しやすい点は大きなメリットです。
特に新規事業立ち上げやシステム刷新の初期段階では、他にも多くのコストが発生します。システム投資を最小限にできることは、導入時のリスク低減にもつながります。
③システム運用・保守の手間が不要
通常、独自構築のシステムでは以下のような運用業務が発生します。
- サーバー監視
- セキュリティパッチ適用
- OS・ミドルウェア更新
- 障害対応
- バックアップ管理
- システムアップデート
一方、マルチテナント型のSaaSサービスでは、これらを基本的に提供事業者が一括管理します。利用企業側はインフラ運用を意識する必要がなく、本来の業務そのものに集中しやすくなります。
特に自社にエンジニアや情報システム部門がない企業にとっては、専門的なインフラ管理を外部化できるメリットは非常に大きいでしょう。
マルチテナント型システムのデメリット

マルチテナント型システムは多くのメリットを持つ一方、共有基盤ならではの制約も存在します。特に利用規模の拡大や高度な要件への対応が必要になると、マルチテナント特有の課題が顕在化するケースも少なくありません。
ここでは代表的な3つのデメリットを解説します。
①他テナントの障害や負荷の影響を受けやすい
複数企業が同じサーバーやデータベース、ネットワークリソースを共有するため、他テナントの利用状況による影響を受ける可能性があります。
特に「ノイジー・ネイバー問題」と呼ばれますが、これは特定テナントによる急激なアクセス増加や大量処理によってサーバー負荷が高まり、同じ基盤を利用する他社のパフォーマンスにも影響が及ぶ現象です。
具体的な影響として、大量アクセスによる負荷集中やシステム障害によるリソース逼迫、外部攻撃による一時的な負荷増大などがあります。
近年のクラウドサービスではリソース制御や負荷分散技術が進化しており、こうした問題は以前より軽減されていますが、共有環境である以上は完全に他テナントの影響を排除することは難しいのが実情です。
業務内容によっては、わずかな表示遅延や障害が大きな機会損失につながるケースもあるため留意しておきましょう。
②自社の厳格なセキュリティポリシーを適用しにくい
マルチテナント型では、インフラやシステム基盤の管理をサービス提供者側が担います。これは運用負荷軽減というメリットがある一方、自社独自のセキュリティポリシーを細かく適用しづらい側面もある点に注意が必要です。
多くのSaaSサービスでは高水準のセキュリティ対策が実施されていますが、大企業や金融機関などでは、より高度なセキュリティ要件が求められる場合があります。具体的には、特定リージョンでのデータ保管、独自のアクセス制御ポリシーや脆弱性対策、厳格なログ管理・監査体制などです。
マルチテナント型では共通インフラを前提としているため、こうした個別要件への柔軟な対応が難しい場合があります。
また、利用者側ではサーバー内部へ直接アクセスできないことも多く、どのような構成で運用されているかを完全には把握できないケースもあります。
③カスタマイズ性が低く、独自要件に対応しにくい
マルチテナント型システムでも、設定変更やアプリ追加など一定範囲のカスタマイズは可能です。しかし共通基盤を利用する性質上、根本的なシステム改修には制限が設けられています。
マルチテナント型サービスでは対応が難しくなる要件は次のようなものです。
- 独自業務ロジックの実装
- 特殊な業務フローとの連携
- データベース構造の変更
- 画面UIの大幅な改修
- 基幹システムとの複雑な連携
特に事業規模が拡大すると、「自社独自の業務要件へ対応したい」「業務効率化のため独自のカスタマイズを行いたい」といったニーズが増えていきます。しかしマルチテナント型ではシステム全体の整合性や他テナントへの影響から独自要件への対応がしづらく、その結果、運用をサービス仕様に合わせる必要が生じたり、実現したい施策を断念せざるを得なかったりすることもあります。
ECサイト構築におけるマルチテナント型システムの限界

ここまでマルチテナントの特徴やメリットについて全般的な解説をしてきましたが、本章からは、インターネット通販(EC)におけるマルチテナント型システムに絞ってより詳しく掘り下げていきます。
マルチテナント型(SaaS型)ECプラットフォームは、低コストかつスピーディに導入できる点で大きなメリットがあります。特に、標準機能を中心に運用できる小~中規模ECでは高い費用対効果を発揮し、多くの事業者に利用されています。
しかしその一方で、EC事業の成長に伴い、マルチテナント型ならではの限界が課題となるケースも少なくありません。
システムに業務を合わせる必要が生じやすい
前章でも触れた通り、マルチテナント型ECプラットフォームは共通基盤を複数企業で共有する構造であるため、カスタマイズ性には一定の制約があります。
もちろん、デザイン変更やアプリ追加、外部サービス連携など、ある程度の拡張は可能です。しかしシステムの根幹に関わる仕様変更や、独自業務に合わせた柔軟な改修には対応できないケースが多くあります。
そのため、事業規模が拡大し、自社独自の商流や運用フローが複雑化してくると、本来は業務に合わせてシステムを最適化したいにもかかわらず、逆に「システム仕様に業務を合わせる」といった妥協を余儀なくされます。
特に、複数倉庫の管理や特殊な受発注フロー、独自の会員ランク設計、基幹システムとのリアルタイム連携などを求める場合、SaaS型では実現が難しくなることが多いです。
O2O・オムニチャネル戦略との相性課題
近年のECでは、単にオンライン販売を行うだけではなく、実店舗とECを横断した顧客体験の最適化が重要視されています。
代表的なものが、ECから実店舗への送客や店舗受取(BOPIS)を実現する「O2O施策」や、顧客情報・在庫情報・購買履歴などを統合管理する「オムニチャネル戦略」です。
こうした施策を本格的に推進するためには、ECシステムだけでなく、実店舗側のPOSシステムや在庫管理システム、CRM、会員基盤などとの深いデータ連携が不可欠です。
しかしマルチテナント型ECプラットフォームでは、システム構造そのものが共通化されているため、外部システムとの複雑な連携や独自仕様への対応には限界があります。
店舗在庫をリアルタイムでECサイトに反映したり、店舗・EC横断でのポイントや会員ランクの統合といったシームレスな顧客体験の提供や、「実店舗の購買データをECのマーケティングに即時活用する」といった高度な要件は、SaaS/APIのECシステムでは実現が難しいでしょう。
O2Oやオムニチャネル戦略についてより詳しく知りたい方は、以下のコラムをご覧ください。

O2Oマーケティングとは?ECサイトと実店舗を連携し、一貫した顧客体験の提供により売上を最大化する戦略を徹底解説

オムニチャネル戦略で売上最大化を目指す!成功事例から学ぶ戦略と実現への道筋【徹底解説】
シングルテナント型にも別の課題がある
上述したマルチテナント(SaaS)の限界を解決するため、シングルテナント型、つまり個別のECプラットフォームをフルスクラッチ開発するという選択肢もあります。
確かにフルスクラッチなら自社専用環境として自由度の高いシステム構築が可能です。独自業務フローへの対応や、基幹システム・POSとの深い連携、オムニチャネル戦略に基づく大規模カスタマイズなども柔軟に実装できます。
しかしその一方で、ゼロからシステムを設計・開発する必要があるため、初期費用は非常に高額になりやすく、開発期間も長期化します。
さらにフルスクラッチ開発では開発会社や特定エンジニアへの依存・属人化傾向が強くなりやすく、いわゆるベンダーロックインのリスクが生じます。将来的な改修や保守において技術的負債となるケースも少なくありません。
※ベンダーロックインについて詳しくはこちらをご覧ください。

ベンダーロックインとは?原因と7つのリスク、回避・脱却する具体策を徹底解説
つまりECプラットフォーム選定では、「SaaS型か、フルスクラッチか」という単純な二択ではなく、コスト・拡張性・運用性・将来的な事業成長まで含めてバランス良く検討することが重要なのです。
自由と資産性を両立する「第三の選択肢」EC-CUBE
前章では、マルチテナント型(SaaS型)ECプラットフォームと、シングルテナント型(フルスクラッチ)それぞれの課題について解説しました。
SaaS型は低コストかつスピーディに導入できる一方、カスタマイズ性や拡張性に限界があります。反対にフルスクラッチは高い自由度を持つものの、莫大な開発コストや長期化する開発期間、属人化による技術的負債といった課題を抱えています。
この両者の長所を併せ持つ、ECプラットフォームの「第三の選択肢」として多くのEC事業者から支持を集めているのがEC-CUBEです。
フルスクラッチより安く、SaaSより自由な「業務適応型コマース基盤」
近年、多数の企業がSaaS型ECプラットフォームによる低コスト・短期間でのEC導入を実現しています。
SaaS型サービスは標準的なビジネス形態に最適化されているため、これを利用する事業者は自社業務をシステム側に合わせる「Fit to Standard」での運用が前提となっています。しかし企業ごとに異なる商習慣や販売ロジック、基幹システム連携まで完全に標準化するのは難しく、本来実現したい業務を断念せざるを得ないケースも少なくありません。
EC-CUBEはこうした課題に対し、「業務にシステムを適応させる」という思想で設計されています。フルスクラッチのようにソースコードレベルでの自由なカスタマイズが可能で、企業独自の業務フローや複雑な商流、販売形態を柔軟に実装できる「業務適応型」のコマース基盤です。またEC-CUBEはオープンソースのプラットフォームであるため、ゼロから全機能を開発するフルスクラッチよりも導入コストを大きく抑えられます。
SaaS型の「導入しやすさ」と、フルスクラッチ型の「柔軟性・資産性」を両立する、現実的かつ戦略的な選択肢といえるでしょう。
さらにEC-CUBEはソースコードや顧客データを自社の「デジタル資産」として保有・蓄積できます。自社主導でシステムを継続運用できるため、特定ベンダーへ依存する「ベンダーロックイン」を回避しやすい点も大きな強みです。
大規模・高セキュリティ要件に応える「EC-CUBE Enterprise」
より高度なセキュリティ要件や大規模トラフィックへの対応が必要な企業向けには「EC-CUBE Enterprise」という上位プラットフォームも提供されています。
EC-CUBE Enterpriseは、OSS版EC-CUBEをベースに、エンタープライズ向けの非機能要件である「セキュリティ」「性能」「可用性」を高水準でパッケージ化したサービスです。
一般的なSaaS型ECプラットフォームでは難しい、大規模アクセスへの対応や高可用性設計、厳格なセキュリティポリシーへの適応なども可能となっており、大手企業や複雑な業務要件を持つ企業にも対応できます。
また、EC-CUBE Enterpriseでは単なるシステム提供だけでなく、EC専業20年以上の知見を持つ専門チームによる伴走支援も特徴です。設計・構築・運用・マーケティングまで含めた総合支援により、単なる「ECサイト構築」にとどまらない、事業成長を見据えたEC基盤づくりを実現できます。
さらに、BtoB取引、オムニチャネル、マーケットプレイス、製造業向け受発注DXなど、複雑な業界特有の商流にも対応しており、標準化されたマルチテナント型ECでは実現できない高度な要件へ柔軟に対応できる点も強みです。
自社でマルチテナント型サービスを構築・提供する場合もEC-CUBEが活躍
EC-CUBEの強みは、自社ECサイト構築だけに留まりません。
ここまでは事業者が出店者(テナント)としてEC-CUBEを利用するシーンを想定してご説明してきましたが、実はEC-CUBEは、「自社がマルチテナント型サービスを提供する側」になるケースでも非常に有効な選択肢となります。
具体的には、複数のテナントを抱えるモール型ECサイトや、複数店舗を統合管理するリユースプラットフォームなどのマルチテナント的な構造そのものを自社で構築する場合です。
こうしたプラットフォームを完全フルスクラッチで開発しようとすると、膨大な開発コストと長期間のプロジェクト化が避けられません。さらに、運営開始後も継続的な改修や機能追加が発生し、技術的負債が蓄積するリスクもあります。
以下にご紹介するEC-CUBE Enterpriseの業界特化型ソリューションを活用すれば、フルスクラッチよりも圧倒的に短期間かつ低リスクで、強固なマルチテナント型プラットフォームを構築できます。
EC-CUBE Enterprise for Marketplace
マーケットプレイス型・モール型EC構築・運用サービス「EC-CUBE Enterprise for Marketplace」は、従来のショッピングモール構築にとどまらず、BtoB受発注、複数ブランドの会員統合、クローズドな組織購買、施設・実店舗連携など、複雑化するビジネスモデルに対応できるソリューションです。マルチテナント構造に必要な権限管理や店舗ごとの決済分離、複数管理画面などを備え、業界特有の商習慣や事業戦略に合わせた柔軟なカスタマイズを実現。さらに、AI活用提案やDXコンサルティングも含めたトータル支援により、大規模かつ高度なマーケットプレイス構築を強力にサポートします。
EC-CUBE Enterprise for Re:Use
リユース事業特化型EC構築・運用サービス「EC-CUBE Enterprise for Re:Use」は、ブランド品やトレカ、建機など、商材ごとに異なる複雑な商習慣や業務フローに対応できる高いカスタマイズ性を備えたソリューションです。オンライン買取・査定管理、1点ものの在庫管理、POS・基幹連携など、リユース特有の業務要件に対応しながら、AI活用による査定支援や出品業務効率化も実現。さらに、業界知見を持つ専門チームによるコンサルティング・伴走支援を通じて、リユース事業のDX化と継続的な事業成長を支援します。
独自の商流や基幹連携を実現した構築事例
マルチテナント型では実現が難しい複雑な業務要件をEC-CUBE(オープンソース版)で解決した実例をご紹介します。
BtoB特有の複雑な物流・基幹連携を実現(UCCコーヒープロフェッショナル様)
UCCコーヒープロフェッショナル様は、業務用食品・コーヒー商材を扱うBtoB EC基盤としてEC-CUBEを導入し、複雑な物流・受注体制を構築しています。全国複数の倉庫からの出荷やメーカー直送を組み合わせながら、在庫状況や配送距離をもとに最適な出荷を可能に。BtoB特有の複雑な商流にも柔軟に対応しています。
また、約1万点に及ぶ商品群を扱いながら、受注から発送までのプロセスを効率化。ECと物流・在庫管理をシームレスに連携することで、大規模な業務用EC運営を安定的に支える基盤を実現しています。

UCCコーヒープロフェッショナル、複雑なBtoB物流と約1万アイテムの受注網を「EC-CUBE」で刷新
大規模会員データと連携したオムニチャネル構築(ダスキン様)
ダスキン様は、全国の加盟店によるリアルな接点とECを融合し、200万人規模の会員基盤を活用したデジタルとリアルを融合した戦略を推進しています。EC-CUBEを活用することで、複雑なフランチャイズ型ビジネスモデルへ対応しながら、デジタルとリアルを横断した顧客体験の最適化を実現しました。
また、高齢化する既存顧客基盤への対応だけでなく、若年層との新たな接点創出にもECを活用。加盟店とデジタルを連携させる「デジタルアシスト」の考え方を軸に、顧客LTV向上と継続的な事業成長を支えるEC基盤を構築しています。

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BtoB ECと基幹システム・倉庫データを自動連携(オフィスコム様)
オフィス家具のECサイトを運営するオフィスコム様は、BtoB取引に対応したEC基盤を構築し、基幹システムや倉庫データとの連携を実現しています。複数の倉庫からの出荷やメーカー直送といった複雑な物流に対応しながら、基幹データベースや倉庫データから商品在庫を管理することで、業務全体の効率化を図りました。
また、EC-CUBEの自動連携機能を活用して正確な出荷オペレーションを実現。ECと物流システムがつながる仕組みにより、BtoB特有の要件に対応しつつ、安定した運用と顧客満足度の向上を両立しています。

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マルチテナントに関するFAQ

マルチテナント型システムについてよくある質問をまとめました。ECサイト構築やプラットフォーム選定を検討する際の参考としてご覧ください。
- マルチテナント形式だとセキュリティ面でのリスクはありますか?
-
マルチテナント型では複数企業が同じシステム基盤を共有するため、セキュリティ上の不安を持つ方は少なくありません。しかし実際には、多くのSaaS型サービスではテナントごとに適切な論理分離が行われており、安全に運用されています。アクセス権限管理やデータ分離、通信暗号化なども一般的に実装されています。
ただし、リスクが完全にゼロになるわけではありません。特に金融機関や大企業など、高度なセキュリティポリシーや独自の監査要件が求められる場合は、共通基盤であるマルチテナント型では対応しきれないケースが多く、シングルテナント型や専有環境を選ぶ必要があります。
- 将来的に独自機能を追加したくなった場合、マルチテナントでは限界がありますか?
-
一定範囲であればマルチテナントでもAPI連携やアプリ追加によって対応可能です。特に近年のSaaS型ECプラットフォームは拡張機能も充実しており、標準的な機能追加であればほとんど障壁はありません。
しかしコアシステムの改修が必要になるような独自機能や、自社特有の業務フローへの深い対応に関しては、共通基盤を前提とするマルチテナント型では実装に限界があります。具体的には、独自の受発注ロジック、特殊な在庫管理、複雑な基幹システム連携、独自UI設計などです。
将来的な拡張性まで見据えるなら、ソースコードを開示・所有できるEC-CUBEのようなオープンソース型プラットフォームがおすすめです。自社要件に応じた柔軟なカスタマイズや長期的な資産形成を行いやすくなります。
- ECサイト運営に適しているのはマルチテナント・シングルテナントのどちら?
-
これは事業フェーズや求める要件によって異なります。
低コストかつ短期間でECを立ち上げたい場合には、マルチテナント型(SaaS型)が適しています。システム運用負荷も小さいためスモールスタート向きです。
一方で、事業成長に伴い、独自の商流や基幹システム連携、オムニチャネル対応など高度な要件が必要になる段階ではSaaS型プラットフォームの制約が課題となることが少なくありません。
中長期的な事業成長を見据えるなら、単純なSaaSかフルスクラッチかの二択ではなく、EC-CUBEのような「自由度」と「資産性」を兼ね備えたパッケージやオープンソース型へのリプレイスをご検討ください。
まとめ
今回は「マルチテナント」について詳しくご説明しました。
マルチテナント型(SaaS型)システムは低コスト・短期間で導入できる点が大きな魅力であり、スモールスタートや標準的な業務要件には非常に適した選択肢です。その一方で、事業成長に伴って独自のビジネスモデルやセキュリティポリシーへの対応に関しては共有基盤ゆえのカスタマイズ制限が課題になるケースもあります。
反対に、シングルテナント型やフルスクラッチ開発は高い自由度を実現できるものの、膨大な開発コストや運用負荷、属人化による技術的負債といったリスクを抱えやすくなります。
ECプラットフォーム選定においては、単純に「コスト」か「自由度」か二者択一ではなく、自社の業務要件へ柔軟に適応できるか、そしてシステムやデータを自社のデジタル資産として蓄積・成長させられるかが、より重要になっていくでしょう。
だからこそ、SaaSの手軽さとフルスクラッチの自由度を両立する「業務適応型コマース基盤」EC-CUBEは、多くのEC事業者にとって有力な選択肢となると確信しております。
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