特殊条件でも柔軟に対応。社販ECにEC-CUBEを選んだ理由とその実現プロセス


EC-CUBE公式アドバイザーに
ご相談いただけます
小学館の書物と読者をつなぐべく、さまざまな業務を執り行う株式会社小学館パブリッシング・サービス様。2024年、グループ企業を横断する社内販売サイトの運営を担うことになり、システム開発を得意とする株式会社エム・エー・ディー様と協業で全面リニューアルを実施されました。
運営担当の松本様は「今回のリニューアルをきっかけに、グループのDX推進に新たな風を吹かせたい」と語ります。一般的なECサイトよりも条件が多い中での社販ECリニューアル。その内幕や苦労、工夫した点をお話しいただきました。
お客様情報
株式会社小学館パブリッシング・サービス
「小学館の本と未来の読者になるであろう方々との接点を創ること」をミッションとし、小学館の全刊行物の販売促進を手がける。主な業務は書店向けセールスプロモーション提案、施設売店などへの卸業、カスタマーサポート業務。
開発パートナー情報
株式会社エム・エー・ディー
17年以上のEC-CUBEを活用したEC構築の実績をもとに、B2C/B2Bを問わず柔軟なソリューションを提供しています。オープンソースの拡張性と当社の技術力を活かし、業務プロセスとECを統合。企業のDX推進と持続的な成長を支援します。

福利厚生の一環としての社内販売ECサイト
-
リニューアルを手がけられた社内販売サイトについて教えてください。
- 松本 様:
-
書物の社内販売サービスは、小学館・集英社を中核とする一ツ橋グループの企業約50社、数千人の従業員への福利厚生の一環として提供されていて、主に小学館・集英社・白泉社系列の13の出版社の刊行物を取り扱い、対象の従業員は社員割引価格で購入できます。
もともとFAXやメールなどで個別対応していたところ、約10年前に専用ECサイトが開設されグループ内の別会社が運営してきました。それをこのたび当社が運営することになり全面リニューアルしたんです。リニューアルの理由は課題改善と利便性向上のためでした。
というのも、従来のサイトは素人目にも簡素なつくりで使い勝手が悪かったからです。イントラネット上にあったため社内パソコンからしかアクセスできない上に、会員登録機能がなかったので全てゲスト扱いで販売処理されていました。
これでは利用者は毎回面倒ですし、またEC担当者としてもアクセス履歴が追えず事故が起こったときの個別対応が難しい状況でした。働き方が多様化する中、例えばリモートワーク中の人が自宅にいながら購入したり、スキマ時間にスマートフォンから購入できれば便利だと考えました。
-
エム・エー・ディー様をパートナーに選ばれた経緯は?
- 松本 様:
-
エム・エー・ディーさんは、聞けばEC-CUBEのトップベンダーとのこと。従来のサイト運営に旧バージョンであるEC-CUBE Ver2系が使用されていたので、リニューアルについて相談したことがきっかけでした。
その際、今利用しているVer2系は古いためにサポートが切れていると教わり、リニューアルのタイミングで最新の「EC-CUBE 4系」に変更することにしたんです。

膨大な商品数を扱うクローズドなECサイト。複雑な条件もEC-CUBEなら実現できた
-
他のEC構築システムではなく、EC-CUBEのバージョンを更新された理由を教えてください。
- 諸戸 様:
-
当初は他のSaaS系ECカートやASPも検討対象に入れていましたが、今回の機能要件を満たせるか分からない不安がありました。反面、EC-CUBEは自由度が高く、特殊な販売形態にもスクラッチで対応できることが分かっていたため第1候補に。
EC-CUBEのシェアの高さも小学館パブリッシング・サービス様にご安心いただく材料となったと思います。
-
一般的なECサイトとは異なり、社販ECは独自の難しさがあるそうですね。リニューアルのポイントを教えてください。
- 松本 様:
-
社販ECの根本的な難しさは、福利厚生サービスの一環として存在するために利益を追求できないところです。またサイト特性として、会員登録できるアカウントを制限し、クローズドな環境を構築する必要がありました。
その上で、利便性の面から改善したポイントは大きく3つです。
会員登録の仕組みを構築し、購入履歴と個人IDに紐付けたこと。イントラネット内に限定した環境からインターネット上に移行したこと。そしてキャッシュレス決済(PayPay、クレジットカード)を導入したこと。
会員登録やキャッシュレス決済は一般的なECだと当たり前の機能ですが、予算には限りがあります。その中でいかに対象者が使いやすいかたちをつくるのかがポイントで、今回はできる限り時代に合わせたアップデートを実現したという感じですね。

-
機能面ではどのような工夫を凝らされたのでしょうか。
- 諸戸 様:
-
管理機能での工夫としては、新しく始めた会員登録システムが特徴的です。今回はグループ内もしくは関わる方の利用が基本的ですから、まずは企業ドメインのみでのメール認証による登録制度を導入。それに加え、一部OBの方も利用できるサービスなので、ドメインから外れても会員ステータスを維持できるよう別途管理するようにしました。
また数万件に及ぶ商品データの管理システムに工夫を凝らしました。通常、商品登録はECサイトの管理画面から1件ずつ行いますが、今回は商品管理の基幹システムがあったので、そのデータをAPI経由で取得し日次で更新する仕組みを構築しました。
画像データは商品情報とは別のサーバーから取得するため、EC-CUBE内でISBN(国際標準図書番号)を管理することで、ISBNと紐付いた画像を取得するように工夫しています。ご要望のあった「セキュリティに配慮したクローズドな環境で外部注文を可能にする」という構成は初めてのチャレンジで、当初はハードルが高いのではと懸念していましたが、EC-CUBEで思いのほかスムーズに実現できました。
やや難しかったのはセキュリティレベルの担保と外部からのログイン購入の仕組みづくり、割引価格での販売設定ですが、1つずつ問題をクリアしていきました。

リニューアルの壁は認識の齟齬。グループ内の合意を得るため奔走
-
社販ECサイトとしての在り方から変えることで、システム構築以外でのご苦労もあったと聞いています。
- 松本 様:
-
大きな課題となったのは、機能面の検討以上に、グループ内での合意形成でした。
会員向けに制限をかけたEC運営とはいえ、インターネット上で展開することに対しては慎重な意見も多く、リスク管理の観点からさまざまな検討が必要でした。当グループは歴史があり、多くの企業が参画しているため、それぞれの文化や方針も尊重しながら進める必要があります。単に「IT化」「DX推進」と掲げるだけでは伝わりにくい場面もあり、今回のシステム変更についても、「従来のイントラネット運用を変更する意義や必要性」「新たな運用に伴う費用面やセキュリティ対応」など、多面的な観点から丁寧な説明を重ねる必要がありました。
当初は、グループ内の調整に一定の時間を要しましたが、エム・エー・ディーさんの協力のもと、当社で制作費や保守運用費の試算を行い、セキュリティ対策についても分かりやすくご説明することで、各社からのご理解を得ることができました。
グループのDX推進に新たな風を吹かせたい
-
リニューアル後の利用者からの反応は上々だそうですね。
- 松本 様:
-
キャッシュレス決済ができるようになったことと、社外からでも購入ができる点はやはり好評です。少しずつユーザーが増えている手応えもありますし、あるグループ会社の総務担当からも「革新的ですね」と言っていただきました。
福利厚生サービスという性質上、利益を追求できない、費用をかけてデザインに凝ったりできないなど特殊な条件がありますが、エム・エー・ディーさんは当グループの文化や業界の価値観を踏まえた上で、良いバランスを探ってくださっているのでありがたいですね。
-
今後の展望を教えてください。
- 松本 様:
-
最近は「電子書籍の販売があると嬉しい」といった要望も増えているので、いずれ実現できればと思っています。社販サイトは従業員の方々にとって、所属企業だけなく他のグループ企業の作品にも触れられる場ですので、より使い勝手良く充実させていきたいです。
実は今回のECサイトリニューアルで、外部の専門パートナーと連携してシステム開発に取り組みました。その点でも画期的な事案となりました。
これまでDXを意識してはいても、特に組織をまたぐ仕組みだと足並みを揃えることが難しい面がありましたが、そんな中で異なる業界から新たな知見を共有していただいて、すごく新鮮でしたし、よい刺激になりました。
グループ内のDX推進の波に良い影響を与えたと自負していますので、エム・エー・ディーさんには今後も新サービスをつくるときやシステム改修のとき、ビジネスを一緒につくり上げていく仲間として期待しています。
- 諸戸 様:
-
どの企業様にも固有の課題がありますが、松本さんはいつも事情や課題を分かりやすく共有してくださりありがたいです。
今回の社販ECサイトリニューアルをきっかけに、当社スタッフが小学館パブリッシング・サービス様に常駐することになりました。引き続き担当者と積極的に情報共有を行い、ご期待に添えるよう後方から体制の充実に尽力していきます。

小学館パブリッシング・サービス様では、ご利用者の皆さんの利便性を考えてさらなるブラッシュアップを目指されるとのこと。福利厚生サービスの充実は従業員の方々にとってうれしいものですよね。
特殊な条件下のECサイト構築に「EC-CUBEなら実現できると思った」と選んでいただけたこと、とても光栄なお話です。
松本様と諸戸様の会話からは、大きなプロジェクトを共にやり遂げた方どうしのお互いへの信頼感が伝わってきました。社販ECのリニューアルをきっかけに、小学館パブリッシング・サービス様とエム・エー・ディー様の協業がグループのさらなるDX推進に寄与されることをお祈りしております。