イーシーキューブも参加しました!EC事業者限定のユーザー交流会「つながりのわ」イベントレポート
2025年5月27日(火)、都内のコワーキングスペース「TAM COWORKING TOKYO」にて、アドエビスユーザー交流会「つながりのわ」が開催されました。
この交流会は、広告効果測定プラットフォーム「アドエビス(AD EBiS)」のユーザー様を対象に定期的に行っているものです。
製品の最新情報やマーケティング活動に役立つ話題をご提供する場として、また実際に日々アドエビスを活用されている現場で得られた経験やナレッジの共有の場として、大変ご好評いただいています。
アットホームな雰囲気の中で、参加者の皆様がつながりを大切にしながらマーケティングについて考える、そんな空間づくりを目指しています。
第6回目となる今回は、株式会社TAM・株式会社イーシーキューブ・株式会社イルグルムの3社共催。前半は各社の専門家によるセミナー、後半はご参加の皆様同士で自由に交流いただける懇親会という二部構成で行われました。
ここでは、セミナーの講義内容の一部をご紹介するとともに、大盛況となった懇親会の様子を振り返りたいと思います。
目次
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第1部:セミナー
「ユーザーファーストのECサイト成功の秘訣」と題したセミナーでは、ECサイトの構築・運用に欠かせない3つの視点──「ECシステムの選択」「UI/UXの改善」「施策の効果計測」について、最前線で活躍するエキスパートがご登壇くださいました。
「ECシステムの柔軟さ」が事業の成長をもたらす重要な鍵(株式会社イーシーキューブ・藤井)

最初の登壇は、株式会社イーシーキューブのクリエイティブデザイン室・藤井秀全(ふじい ひでまさ)です。インハウスのクリエイターとして広告にまつわるクリエイティブや社内の制作物全般を手がけています。
最初に、ECサイトにおけるユーザーファースト(顧客体験の向上)が重要な理由として以下の3点をあげました。
- 消費者がECサイトを評価するポイントは商品構成や価格だけではない。「体験」もその一つで、利用時にわずかでも不便を感じると離脱されてしまう。
- オンラインとオフラインの接点が入り混じる今、購入体験の一場面がショップ全体の印象に大きく影響する。
- 新規顧客の獲得が難しくなる中、「ここでまた買いたい」と思ってもらうことの価値がますます高まっている。
また2014年~2023年のBtoC-EC市場のデータを紹介し、物販系分野とサービス系・デジタル系分野では成長幅に大きな差がある点に注目。「O2O」「オムニチャネル」「ショールーミング型店舗」といった近年のBtoC-ECのトレンドワードも交えながら「物販系のEC事業者が、顧客体験向上のユーザーファーストに取り組んできた結果、この差が生まれたのではないか」と考察しました。

さらに藤井は、最近のEC-CUBEユーザーからの問い合わせ内容の変化にも触れ、次のような傾向があると説明。
- モール型ECや、企業の基幹システムとの連携といった「複雑な要件」へのニーズが急増している
- 特に大規模企業からの問い合わせが目立っている
こうした背景のもと、イーシーキューブ社ではエンタープライズ向けのEC構築・運用サービス「EC-CUBE Enterprise」を展開。数多くの大規模ECの構築をサポートしています。
「(エンタープライズのお客様は)皆様それぞれ自社ECを運用されてきた上で、ユーザー体験向上のために、よりビジネスを発展させていくために、システムの乗り換えすら辞さないという覚悟を持たれているようです。まさにECの次のフェーズに進もうとされているのを感じます」
また、ECサイトにおけるUX(ユーザビリティや視認性、表示速度など)は「顧客体験の一部分にすぎない」とし、有名な『UX白書(User Experience White Paper)』の内容を引用しながら、ECサイト利用に関わる顧客体験を時系列で解説。たとえ商品自体に独自性がなくても、体験価値によって競合との差別化は十分可能だと結論づけました。
さらに、顧客体験の改善には、システムの柔軟性や他システムとのスムーズな連携が欠かせないと強調し、次のように締めくくりました。
「ECシステムの柔軟さが事業の成長をもたらす重要な鍵となります。システムがボトルネックとなっている課題をお持ちなら、ビジネスの次を見据えてシステム乗り換えも検討すべきです」

顧客と“共感”でつながるための「やり切れる体制づくり」(株式会社TAM・引野氏)

続いて登壇されたのは、株式会社OHTAM代表取締役・引野 文也(ひきの ふみや)さん。株式会社TAMの完全子会社であるOHTAMで、ECチームの責任者として事業戦略から現場支援まで幅広く携わり、これまで50ブランド以上のECサイトを支援されています。
冒頭では、日本国内の人口減少という大きなトレンドに触れながら、企業が今後意識すべきECの在り方を次のように語られました。
- 顧客一人ひとりとのシームレスな接点・体験作りとLTV向上が求められている。
- 一連の「体験」を提供し、顧客接点を「面」で押さえられるブランドが優位に立っている。
「現在は、商品の機能的な価値や価格の安さだけでは顧客に選び続けられる理由になりにくい。真のユーザーファーストというのは、1人1人の顧客の価値観を揺さぶるような“共感づくり”が必要になっているんじゃないかと感じています」
さらに有名ECサイトの実例をいくつか挙げながら、それぞれがどのように“共感”を生み出しているのかを丁寧に分析・解説されました。
続いて、ご自身のチームが実際に行っている改善アプローチについての説明がありました。
- 支援方針
「やり切る体制」の構築を重視。個別の課題や方針を基に実行可能な戦略を提案し、予算配分も極力柔軟に行う。 - 具体的な取り組み
・月次ミーティングでは重要戦略・戦術の練り直しや施策設計、レポーティング、改善提案などを行い、週次ミーティングでは情報共有と施策の推進を行う。
・ページごとにアクセス数や売上、伸びしろを考察し、最も改善余地のあるページから対策を行う。
・ECにまつわる様々な指標の中で、より重要な指標やKPIから改善を行う。
・トレンドや他社分析など、データドリブンにはないアプローチで改善テーマを探る。
・短期的な施策だけでなく、ブランドストーリーやOMOなど、定性的な観点から中長期でのアプローチも行う。


最後に引野さんは、ECサイト改善を行う上で大切な3つのポイントをあげられました。
- やり切れる体制を作る
- 「戦略設計」と「実行」のバランスを取る
- 合理的な優先順位付けの型を持っておく
特に「やり切れる体制」の重要性について、次のように力強く語られました。
「生成AIなどを活用すれば属人的な業務は少なくなると思いますが、人がやるべきことは、最後やりきる、仕上げるところ。『これをやろう』とGoを出すこと。この意思決定をしていかないとPDCAが停滞します。最後決め切るのが人の役割だし、ECが伸びていくための重要なことと考えています」
徹底したデータ分析でユーザーの行動を読み解く(株式会社イルグルム・檜本氏)

最後の登壇は、株式会社イルグルム・カスタマーコミュニケーション企画室の檜本 実花(ひのきもと みか)さんです。新卒でメディアプランナーとしてキャリアをスタート。イルグルムではパートナー企業向け営業やカスタマーサクセスを経て、多くのお客様に価値ある情報を届ける環境づくりに力を注いでいます。
アドエビスの紹介を交えながら、マーケティング視点から見た「ユーザーファースト」として次の3ステップを提言されました。
- ユーザーの行動を「見える化」する
- 行動データを分析し、ユーザーを理解する
- 理解に基づき改善サイクルを回す
アドエビスでは、ECサイトを訪れたユーザーが「どの広告や検索から流入したのか」「どのページを経由してCV(コンバージョン)に至ったのか」といった一連の行動を非常に高い精度で追跡でき、さらに広告ごとに売上への貢献度の分析も可能です。
実際にアドエビスの管理画面でどのようにユーザー行動が可視化されるのかが詳しく紹介されました。
さらにユーザー行動データやアクセス解析データ、ECサイトの顧客情報を統合的に分析することで、5W1Hでユーザー像の理解を深め、最適なアプローチを導き出し「ユーザー軸でのPDCAサイクル」を展開できると説明されました。

こんな注意点も共有されました。
「ユーザーの行動や興味などを分析しないまま広告施策を行っても、成果が出ないだけでなく、企業や商品に嫌な印象を与えるなどブランディングを損う可能性もあります」
続いて、顧客行動の分析・理解が実際の企業支援に活かされた例として、株式会社Speee様の事例が紹介されました。
同社ではGoogle広告・YSA・Facebook広告・Criteoなど多種多様な媒体をプロモーションに活用されていましたが、
- アトリビューションを踏まえた広告の評価を正確に分析したい
- 顧客解像度を高め、施策の再現性を担保・強化したい
という課題をお持ちだったそうです。
そこでアドエビスで広告媒体毎の接触回数を計測し、「X広告やYouTube広告などの『認知施策』に接触したユーザーが、ディスプレイ広告やリスティング広告を経てCVに至る」という仮説を立ててデータを分析。
その結果、ある程度時間をかけてCVに至る(ジャーニー型)ユーザーと、初回接触から瞬発的にCVに至る(パルス型)ユーザーの2タイプがあり、それぞれ有効な広告媒体やクリエイティブが異なることが判明。「広告の正確な評価」「顧客解像度の向上」両方のニーズに応えられたとのことでした。

この実例から得られる学びを、檜本さんは次の3点にまとめて締めくくりました。
- プロモーション施策の結果からユーザー像を理解する
- 必ず「仮説」を持ってデータと向き合う
- CVまでの一連の接点を見える化・最適化する
第2部:全体懇親会
セミナーのあとは、いよいよお楽しみの交流タイム!ユーザーの皆様と運営スタッフによる「全体懇親会」のスタートです。

今回は、かねてより多くの方からご要望を頂いていた「EC事業者限定」での交流会ということもあり、業種の垣根を越えて、マーケティング担当の方、ECサイトの構築や運用を担う方、事業企画やシステム連携に関わる方など、様々な立場のユーザー様にご参加いただきました。
会場では、第1部のセミナーの感想を語り合う声や、「実はあの課題、うちも同じなんです」といった共感の声があちこちで飛び交い、自然と笑顔があふれる場面も。その他、製品に関するご質問や日々の運用で感じている悩み、他社事例への関心など、ざっくばらんな会話が弾みました。
和やかな雰囲気の中で美味しい食事を楽しみながら、普段はなかなか接点のない他社の方とも気軽に情報交換ができる、貴重な時間となりました。


特にセミナーについては皆様それぞれに多くの学びや共感を得られたようで、懇親会の中でも前向きなご感想が聞かれました。その一部をご紹介しますと…
「小難しい話がなくて、ECへの理解をより深められました」
「登壇者の皆さんの説明が非常に分かりやすく、改めて思考を整理できました」
「ECマーケティングにおいて知っておくべき考え方、手法がよく理解できました」
「ユーザー心理の変化に関する最新の動向を知ることができ、有意義な時間になった」
「ECサイトで成功するために必要な要素について多くの学びがありました。特にAI診断が面白かったです」
「話の中で出されたアドエビスの資料が具体的で興味深かった。ぜひ資料を頂きたいと思います」
「サイト立ち上げ~体験向上~集客という各ステップでの、これまで構想に入れられていなかった新しい論点が明確になりました」
またイベント終了後の参加者アンケートでも、
「交流会パートでは、様々なご立場の方々とフラットに意見交換をさせていただき、自身の新規事業のサービスコンセプトのブラッシュアップや、セールスのポイントなど幅広いテーマで勉強させていただきました。今回のイベントを契機に、もっとEC事業を盛り上げていきたいと思います!ありがとうございました」
「交流会では同業者の方を中心に、ざっくばらんにいろんなお話を聞かせていただき、とても勉強になりました」
といった、うれしいお声をたくさん頂きました。
イベント全体のまとめ
今回のイベントは、普段私たちのサービスをご利用いただいているEC事業関係者の皆様に、ECの成功という大きな目的に向かって問題意識を共有しながら、立場を超えて交流を深めていただく意図がありました。
その趣旨は、第1部の終了後にセミナー全体を総括した檜本さんの言葉に集約されています。
「EC構築・UX/UX改善・マーケティングいずれの領域においても、ECサイト成功の秘訣として共通しているのは『ユーザーの体験をしっかりと意識し、顧客を理解すること』です。
それぞれポジションは違っても、見ているお客様は同じはず。お互い横のつながりを意識して、部署をまたいで一緒に全体最適していくような動きになれば、会社の業績も上がっていくと思います。
普段はお互いの業務を手伝うようなことはないかもしれませんが、このイベントを機会に『隣のチームは、どんなことやってるのかな』などと関心を持って協力し合うきっかけになれば、とてもうれしく思います」
そして参加者のお一人が、懇親会の場でこのようなコメントを下さいました。
「こういう交流イベントがあること自体が、私のようなフリーランスにとってはありがたいです。特にECの広告運用には技術的な面(カートの仕様など)も関係してくるので、制作側の人とマーケの人の交流などは課題解決につながると思います」
本イベントを機に同じ思いを持つユーザー様が増えれば、主催者としてこれ以上の喜びはありません。
ご参加いただいた皆様には、改めて御礼申し上げます。

イーシーキューブでは、ウェビナーやユーザーグループ勉強会などのイベントを定期的に開催しています。開催情報は公式サイトのイベントページや、メルマガでご案内しますので、ぜひお気軽にご参加ください。
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