工場DX(製造業DX)の完全ガイド|スマートファクトリーとの違いから進め方、成功事例まで

#製造業DX

工場DX(製造業DX)の完全ガイド|スマートファクトリーとの違いから進め方、成功事例まで

工場DX(デジタルトランスフォーメーション)は、単なるITツールの導入に留まらず、データ活用を通じて製造業のビジネスモデルや企業文化そのものを変革する取り組みです。人手不足や技術継承の課題が深刻化する中、生産工程の効率化や柔軟な生産体制の構築を目指し、多くの企業がDX推進を急いでいます。この記事では、工場DXの基礎知識から具体的な進め方、直面しやすい課題とその解決策までを網羅的に解説します。

工場DX(製造業DX)とは?

工場DXの定義と概要

工場DXとは、IoTやAI、クラウドなどのデジタル技術を活用し、製造現場のデータを収集・分析することで、生産プロセスの最適化や新たなビジネスモデルを創出する取り組みです。単に紙の帳票をデジタル化する「IT化」とは異なり、データ連携によって部門間の壁を越え、企業全体の競争力を高めることを目的としています。工場DX化が進むことで、需要変動への迅速な対応や、製品の品質向上、さらにはアフターサービスを通じた継続的な収益基盤の構築が可能になります。

「スマートファクトリー」との違い

スマートファクトリーとは、工場内のあらゆる機器や設備がネットワークで接続され、データに基づいて自律的に稼働・最適化される「次世代の工場のあり方(状態・目標)」を指します。一方の工場DXは、そのスマートファクトリーを実現するための「プロセスや変革の概念」です。『スマートファクトリーとは?製造業の構造的な課題を解決する「デジタル工場」のメリットや導入ステップ、事例を分かりやすく解説』の記事でも触れられている通り、工場DXという変革プロセスを経た結果として到達するゴールがスマートファクトリーであると整理できます。

なぜ今、工場(製造業)のDX化が求められているのか?(背景)

人手不足と技術継承問題の深刻化

製造業において、少子高齢化に伴う労働力不足と熟練技術者の退職は喫緊の課題です。長年の経験と勘に依存してきた高度な技術やノウハウが失われるリスクが高まっています。工場DXを推進し、熟練者の判断基準をデータ化・AI化することで、技術の標準化と若手へのスムーズな継承が可能になります。

急速なデジタル化と顧客ニーズの変化(柔軟な生産体制の確立)

市場のニーズは多様化・短サイクル化しており、従来の大量生産モデルでは対応が困難になっています。顧客が求めるカスタマイズ製品を迅速に提供するためには、マスカスタマイゼーション(多品種少量生産)に対応できる柔軟な生産体制が必要です。工場DXによって生産ラインの組み換えや計画変更をデータ主導で迅速に行う仕組みが求められています。

グローバルな競争力強化・国際競争力の維持伸長

海外の製造業では、インダストリー4.0などの国家戦略のもと、デジタル化による生産性向上が急速に進んでいます。日本の製造業がグローバル市場で競争力を維持・伸長するためには、コスト競争力だけでなく、データ活用による付加価値の創出が重要です。工場DXは、品質の安定化やリードタイムの短縮を実現し、国際的な優位性を保つための基盤となります。

工場DXを推進するメリット(期待される効果)

生産工程の効率化と製造コストの削減

稼働データや品質データをリアルタイムで収集・分析することで、ボトルネックとなっている工程を特定し、改善策を迅速に実行しやすくなります。設備のムダな待機時間や不良品の発生率が低下し、歩留まりが向上します。結果として、エネルギー消費の最適化も含めた総合的な製造コストの削減が期待できます。

省力化・省人化による働き方改革

自動化ロボットやAIの導入により、危険な作業や単調な反復作業を機械に代替させることが可能です。これにより、従業員はより付加価値の高い企画や改善業務に注力できるようになります。労働環境の安全性向上と業務負荷の軽減は、従業員満足度の向上と離職率の低下にも寄与します。

人的ミスの防止と作業工程の属人化解消

手入力や目視確認に頼るプロセスをデジタル技術で置き換えることで、入力漏れや確認ミスといったヒューマンエラーを大幅に削減できます。また、作業手順や判断基準がシステム上に可視化・標準化されるため、特定の担当者が不在でも業務が滞らない体制(属人化の解消)を構築できます。

データに基づく意思決定の迅速化・高度化

経営層から現場の管理者に至るまで、勘や経験ではなく「正確なリアルタイムデータ」に基づいた意思決定が可能になります。市場の需要予測と連動した生産計画の調整や、異常発生時の迅速な原因特定など、変化に対するレスポンススピードが大きく向上することが期待できます。

工場DXの主な対象業務領域

工場DXと一口に言っても、その対象は多岐にわたります。自社のどの業務から着手すべきか検討するために、DX化の対象となる主な業務領域を体系的に整理しておきましょう。

生産管理・工程管理

生産計画の立案から、各工程の進捗状況の把握、人員の配置までを最適化する領域です。MES(製造実行システム)や生産管理システムを導入し、現場の稼働データをリアルタイムに連携させることで、計画の遅れに対する迅速なリカバリーや、多品種少量生産への柔軟な対応が可能になります。

品質管理・検査

製品の品質を一定に保ち、不良品の流出を防ぐ領域です。AIを搭載したカメラによる外観検査の自動化や、加工中の温度・振動データを監視して異常を検知する仕組みを導入することで、検査工程の省人化と、ヒューマンエラーによる見落としの防止を実現します。

設備保全(メンテナンス)

機械や設備の故障を防ぎ、安定稼働を維持する領域です。従来の「壊れてから直す(事後保全)」や「定期的に部品を替える(予防保全)」から、IoTセンサーによるデータ分析で故障の兆候を事前に察知して対応する「予知保全(予兆保全)」へのシフトが、この領域におけるDXの核心です。

在庫管理・物流(構内物流)

原材料や部品、完成品の在庫数を正確に把握し、工場内の運搬を効率化する領域です。RFIDタグやバーコードによる在庫データのリアルタイム更新と、AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)による搬送の自動化を組み合わせることで、欠品リスクの低減と作業員の歩行工数の削減を図ります。

受発注・調達業務

取引先との部品の仕入れや完成品の受注を行う領域です。工場内の生産設備がどれだけデジタル化されても、この「社外との接点」がFAXや電話、手入力のままであれば、データが分断され工場全体のDXは完成しません。BtoB受発注システムの導入によるこの領域のデジタル化は、DX全体のボトルネック解消につながります。

生産工場におけるDXの役割と特有の課題

企業全体の中で「生産工場」という特定の現場にフォーカスした場合、DXが果たす役割や直面する課題には独自の特徴があります。

サプライチェーンのハブとしての役割

現代の生産工場は、単なる「モノを作る場所」から、需要と供給を繋ぐ「サプライチェーンのハブ」へと役割を変化させています。生産工場のDXが実現すれば、営業部門が掴んだ市場の需要変動や、設計部門からの仕様変更のフィードバックをリアルタイムに受け取り、生産計画や部品調達に即座に反映させることが可能になります。工場がデジタル化されることで、企業全体の俊敏性(アジリティ)が飛躍的に高まります。

本社や他部門(営業・設計)とのデータ連携の壁

一方で、生産工場特有の課題として「他部門との連携の難しさ」が挙げられます。工場は長年培ってきた独自のローカルルールや職人文化が根付いていることが多く、現場の独立性が高い傾向にあります。そのため、本社(経営層や情報システム部門)が主導する全社的なシステム導入に対して「現場の運用に合わない」と反発が起きたり、営業部門の販売データと工場の生産管理データが分断(サイロ化)されたままになったりするケースが多発します。生産工場のDXを成功させるには、工場内だけの最適化(部分最適)に留まらず、本社や他部門を巻き込んだデータ連携の仕組み(全体最適)を構築するリーダーシップが不可欠です。

工場DXの推進を阻む現状と課題

データ収集・データ利活用の実態と壁

多くの工場では、設備ごとに異なるメーカーのシステムが導入されており、データの形式や通信規格が統一されていません。そのため、「データは存在しているが、システム間で連携できず分析に使えない」というサイロ化の壁に直面します。データを統合し、意味のある情報として利活用するための基盤構築が初期の大きなハードルとなります。

既存の設備・レガシーシステムとの統合の難しさ

稼働から数十年が経過した古い設備(レガシーシステム)は、ネットワーク接続機能を持たないことが多く、最新のIoT機器と直接連携させることが困難です。既存の設備をすべて最新機種に入れ替えるには膨大なコストがかかるため、外付けのセンサーを活用するなど、現実的な統合アプローチを見出す必要があります。

デジタル人材の不足

工場DXを牽引するためには、製造現場の業務知識(ドメイン知識)と、データサイエンスやITインフラに関する専門知識の双方を併せ持つ人材が必要です。しかし、そのような人材は労働市場全体で枯渇しており、自社内での育成にも時間がかかります。外部パートナーとの協業や、現場担当者のリスキリング(学び直し)が求められます。

自社に適したツールの選定が困難

市場には多数のIoTツールやAIソリューション、システム基盤が存在しており、自社の課題解決にどれが最適かを見極めるのは容易ではありません。目的が曖昧なまま「他社が導入しているから」という理由でツールを選定してしまうと、現場の業務フローに合わず、結局使われなくなってしまうリスクがあります。

経済産業省が示す製造業DXのガイドラインと認定制度

工場DXを推進するにあたり、自社だけで手探りで進めるのではなく、国が示している指針や制度を活用することがスムーズな推進につながります。

製造業DX推進ガイドライン(デジタルガバナンス・コード)の役割

経済産業省は、企業がデジタル技術を活用してビジネスモデルを変革するための指針として「デジタルガバナンス・コード(旧:DX推進ガイドライン)」を策定しています。経営者のコミットメントや、ITシステム構築の体制づくり、人材育成の方向性などが体系的にまとめられており、製造業がDXを進める上での「羅針盤」として機能します。

DX認定制度を取得するメリット

DX認定制度とは、デジタルガバナンス・コードの基本的事項に対応し、DX推進の準備が整っている事業者を国(経済産業省)が認定する制度です。
この認定を取得することで、企業の社会的信用やブランド価値が向上し、デジタル人材の採用に有利に働くというメリットがあります。さらに、後述する「IT導入補助金」や「ものづくり補助金」などの申請において審査で加点されたり、低利融資を受けられたりするなど、資金調達面でも大きな優遇措置を受けることが可能になります。

失敗しない工場DXの進め方(4つのステップ)

ステップ1:現場の課題理解と目的の明確化

工場DXの第一歩は、現場が抱えている具体的な課題(歩留まりの悪さ、特定の業務への負荷集中など)を洗い出し、何を解決したいのかという目的を明確にすることです。経営層のトップダウンだけで進めるのではなく、現場のヒアリングを通じて「デジタル化によって現場の作業がどう楽になるのか」というビジョンを共有します。

ステップ2:実現手段の検討と現場を巻き込んだ推進体制の構築

目的が定まったら、それを実現するための技術やシステム基盤を検討します。同時に、IT部門、製造部門、生産管理部門などから横断的にメンバーを集め、プロジェクト推進チームを組成します。現場のキーパーソンを巻き込むことで、導入後の運用定着や業務フローの変更に対する反発を抑えやすくなります。

ステップ3:スモールスタートでのPoC(概念実証)実施と効果検証

最初から工場全体の大規模なシステム刷新を狙うのではなく、特定のラインや1つの工程に絞ってスモールスタートを切ることが重要です。PoC(概念実証)を通じて、導入したツールが想定通りのデータを収集できるか、現場の業務に適合するかを検証します。課題が見つかれば修正し、成功モデルを確立します。

ステップ4:本番システムの構築・運用と組織全体の意識改革・教育

PoCで有効性が確認できたら、対象範囲を段階的に拡大し、本番システムの構築と運用に移行します。新しいシステムを定着させるためには、操作方法のトレーニングだけでなく、「データに基づいて業務を改善する」という組織全体の意識改革が重要です。継続的な教育とサポート体制を維持します。

工場DXの効果を測定するKPI(評価指標)

工場DXの取り組みが成功しているかを客観的に判断するためには、PoC(概念実証)や本番運用の段階で適切なKPI(重要業績評価指標)を設定し、定量的に効果検証を行うことが不可欠です。製造現場で用いられる代表的な指標を紹介します。

OEE(設備総合効率)

OEE(Overall Equipment Effectiveness:設備総合効率)は、「稼働率」「性能稼働率」「良品率」の3つの要素を掛け合わせて算出される、設備の生産性を総合的に評価する指標です。IoTセンサーで稼働データを取得し、チョコ停などの停止ロスや速度低下による性能ロスを可視化することで、OEEの改善度合いをDXの直接的な成果として測定できます。

歩留まり率(良品率)

投入した原材料や部品に対して、実際に良品として完成した製品の割合を示す指標です。AIを活用した外観検査システムによる検知精度の向上や、センサーデータに基づく加工条件の最適化によって不良品の発生を未然に防ぐことで、歩留まり率が向上します。

リードタイムの短縮率

受注から生産、納品までに要する時間(製造リードタイム)がどれだけ短縮されたかを測る指標です。生産計画のデータ連携による手待ち時間の削減や、AGV(無人搬送車)による搬送の自動化、さらには受発注業務のデジタル化による事務処理時間の削減など、工場内外のプロセスがシームレスに繋がることでリードタイムは大きく改善されます。

工場DXに役立つ具体的なツールと技術

AIとIoTを活用した異常検知・予知保全(予兆保全)

IoTセンサーで設備の振動、温度、音などの稼働データをリアルタイムに収集し、AIが平常時との違いを分析することで、故障の兆候を事前に検知する技術です。設備が完全に停止する前に部品交換などのメンテナンスを行えるため、突発的なライン停止による機会損失のリスクを低減できます。

稼働監視・遠隔監視関連ツール

工場内の機械の稼働状況や生産進捗を、離れた場所からダッシュボード上でリアルタイムに把握できるツールです。管理者が現場を巡回しなくても異常に気づくことができ、複数拠点の工場の稼働状況を一元管理することも可能になります。

ロボティクスによる自動化と省力化

産業用ロボットやAGV(無人搬送車)、AMR(自律走行搬送ロボット)を活用し、組み立て、溶接、ピッキング、工場内の部品搬送などを自動化する技術です。単純作業や重量物の運搬をロボットが担うことで、省人化と安全性の向上を同時に実現します。

リアルタイム在庫管理と自動発注システム

RFIDタグやバーコード、重量センサーなどを活用し、部品や製品の在庫数をリアルタイムで正確に把握するシステムです。在庫が一定の基準(発注点)を下回った際に自動で発注データを生成する仕組みと連動させることで、欠品リスクの防止と過剰在庫の削減を両立します。

OTセキュリティ関連ツール

工場DXが進み、OT(制御技術)ネットワークがインターネットや社内ITネットワークと接続されることで、サイバー攻撃のリスクが高まります。不正アクセスの検知、通信の暗号化、エンドポイントの保護など、工場の安定稼働を守るための専用のセキュリティ対策ツールが重要です。

工場DXの導入にかかる費用・コスト相場

工場DXの導入費用は、目的や対象範囲(特定の工程のみか、工場全体か)、活用する技術によって大きく変動します。ここでは一般的な費用相場の目安を3つの段階に分けて解説します。

スモールスタート(数十万円〜数百万円)

特定の設備へのIoTセンサーの後付けや、既存のSaaS・クラウドサービスを活用した一部業務のデジタル化(稼働監視や在庫管理など)から始めるケースです。初期費用を抑えつつ、短期間で効果検証(PoC)を行うのに適しています。

中規模なシステム連携・部門単位のDX(数百万円〜数千万円)

複数の生産ラインをネットワークで繋いでデータを統合する基盤の構築や、既存の基幹システム(ERP)と連携した独自の受発注システムの構築などを行うケースです。企業の固有の業務フローに合わせたカスタマイズが必要になるため、OSS(オープンソース)ベースの構築やパッケージシステムの導入・改修が主な選択肢となります。

大規模なスマートファクトリー化(数千万円〜数億円規模)

工場全体の生産ラインを自動化ロボット(AGVやAMR)で連携させたり、AIによる高度な予知保全システムをフルスクラッチで開発・導入するケースです。ハードウェアとソフトウェア双方への大規模な投資が必要となり、年単位の長期的なプロジェクトとなります。段階を踏んでこのフェーズを目指すのが一般的です。

工場DXに活用できる補助金・助成金

工場DXの推進には、IoT機器の導入やシステム構築など一定の初期費用が発生します。コストの壁を乗り越えるために、国や自治体が提供する補助金・助成金制度を有効に活用することが重要です。

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が自社の課題解決に役立つITツール(ソフトウェアやクラウドサービスなど)を導入する際の経費を一部負担する制度です。受発注業務のデジタル化や、在庫管理システムの導入など、業務効率化を目的としたソフトウェア投資に広く活用できます。

ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)

ものづくり補助金は、中小企業が革新的な製品・サービスの開発や、生産プロセスを改善するための設備投資を支援する制度です。工場DXにおいては、AIを搭載した検査装置や、自動化ロボット、IoTセンサーと連動した最新の生産設備の導入など、ハードウェアを含む大規模な投資に活用されるケースが多く見られます。

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、社会の変化に対応するため、新分野展開や事業転換など、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業を支援する制度です。既存の製造ラインを大幅にDX化し、新たなビジネスモデル(稼働データに基づく予知保全サービスなど)へ転換する際のシステム構築費用などに活用できます。

工場DXの成功事例(導入事例)

旭鉄工株式会社(IoTによる稼働データ可視化と運用改善)

IoTによる稼働データの可視化と、現場の運用改善を組み合わせた事例です。
同社は、設備の細かな停止(チョコ停)による見えない損失や、手書き日報によるデータ不備を解消するため、IoTシステムを導入しました。ビジネスチャットツール「Slack」を導入し、現場からの不具合報告(例:路面のひび割れなど)に対して約3時間で修復を完了させる連絡体制を構築しています。また、自動収集された稼働データをもとに現場で毎日「ラインストップミーティング」を実施し、横展ボードの前で停止原因の分析と対策決定を迅速に行う運用を定着させました。このIoT導入と業務改善の結果、損益分岐点売上高を162億円から133億円へと約30億円引き下げています。さらに、自社で培ったIoTシステム「iXacs(アイザックス)」と改善ノウハウを他の中小製造業へ提供する新会社「i Smart Technologies」を設立し、外販事業を開始しました。
出典:情報処理推進機構(IPA)日本電信電話ユーザー協会

株式会社山本金属製作所(センサー内蔵工具による加工最適化)

センサー技術を活用して加工プロセスをデータ化し、コスト削減と品質保証を両立した事例です。
大阪府大阪市に拠点を置く同社は、経済産業省の「DXセレクション2022」でグランプリを受賞しました。切削工具の内部に温度センサーや加速度センサー、振動センサーなどを内蔵し、加工中の物理現象をリアルタイムで計測するモニタリング機器「MULTI INTELLIGENCE」を開発・導入しています。刃先温度のリアルタイム監視によって工具の摩耗レベルを把握し、寿命を最適化することで年間約15%のコスト削減を実現しました。また、取得した振動・加速度データを解析してビビリ振動を抑制する最適な加工条件を導出し、加工時間の短縮に成功しています。さらに、加工中の振動や温度のリアルタイムデータが正常範囲内であることを品質の証拠として活用し、事後的な検査工程を削減しました。
出典:経済産業省株式会社山本金属製作所株式会社山本金属製作所関西経済連合会

株式会社リョーワ(AI外観検査システムの自社開発と高度人材活用)

外部人材の活用とAI技術により、中小企業が自社主導でDXを実現した事例です。
福岡県北九州市に本社を置く従業員24名の同社は、経済産業省の「DXセレクション2022」で準グランプリを受賞しました。外観検査の自動化には1,000万円規模の初期投資が必要であるという課題に対し、中小企業向けに低価格で導入できるシステムの自社開発を行いました。タイの国立大学と協定を結んで外国人エンジニアを採用しており、従業員24名中6名を占めるタイ出身の高度人材がAI開発の中核を担っています。スマートフォンやタブレット、スマートグラスのカメラで対象物を撮影するだけで、クラウド上のAIが良品・不良品を判定する外観検査システム「CLAVI」を開発しました。さらに生成AIをシステムに統合し、検査結果に基づく品質報告書の自動生成や、異常検知時の関係部署への即時アラート発信といった管理業務の自動化機能を実装しています。
出典:経済産業省ジェトロ日本電信電話ユーザー協会株式会社リョーワ

工場DXの推進を阻む「受発注システム」の行き詰まり

受発注システムの4つの構築方式

工場DXを進める上で、重要な課題となるのが企業間取引(BtoB受発注)のデジタル化です。自社に合ったシステムを選ぶためには、構築方式の違いを理解する必要があります。

受発注のWeb化には、SaaS型(低コスト・短期間だが仕様に業務を合わせる必要がある)、パッケージ型(設定範囲内でカスタマイズ可能)、フルスクラッチ開発(自由だが数千万円規模・半年以上)、そしてOSSベースの構築(EC-CUBEなどを土台に業務要件へカスタマイズする中間的な方式)の4つの選択肢があります。取引先ごとの価格条件や基幹システム連携など、SaaSの標準機能を超える要件がある場合はOSSベースが有力な選択肢になりますが、SaaSより構築期間と初期費用は大きくなります。

SaaSの罠と「現状維持」という大きな壁

工場DXにおいて、汎用SaaSは標準化を強いるため、得意先別価格・代替品番・独自の承認フローなどの例外処理に対応できず、基幹システムとも連携できないケースが多々あります。結果としてシステムの外でExcelとFAXが復活し、二重管理に陥ってしまいます。
また、最大の競合は他社システムではなく「Excel+FAX+紙の現状維持」です。転記・手入力・電話確認に費やされる時間=人件費という「放置のコスト」は甚大ですが、レガシー業務は取引先の都合やベテランの例外処理など合理的な理由で維持されており、「やめられないのは構造の問題」であることを理解する必要があります。

失敗しない工場DXの第一歩

業務のやり方を変えずに、媒体だけをデジタルに置き換える

現場の反発は「やり方が変わること」から生まれます。そのため、取引先にはFAXのままでいてもらい、「業務のやり方を変えずに、媒体(FAX・電話・紙)だけをデジタルに置き換える」ことが第一歩として有効です。
ここで生まれる受注データが、在庫最適化やアフターサービス収益化、そして将来の予兆コマースへと続く「階段の一段目」になります。高度なIoT連携や予兆コマースを最初から目指すのではなく、同じ基盤の上で続く将来の拡張として捉えることが重要です。

製造業の商流に適合する業務適応型コマース基盤

EC-CUBE Enterprise for AfterMarketとは

産業機器・業務用機器メーカー向け 保守部品販売・BtoB受発注DX

EC-CUBE Enterprise for AfterMarketは、産業機器・業務用機器メーカー向けの、保守部品販売・BtoB受発注DXプラットフォームです。SaaSのように「システムに業務を合わせる」のではなく、自社固有の商流に合わせて構築できる「業務適応型コマース基盤」であることが大きな特長です。

段階的なDXを実現する主要機能

業務適応型コマース基盤は、現場の課題解決から将来の拡張まで、同じ基盤の上で以下の機能を実現します。

  • 保守部品販売・BtoB受発注のデジタル化
    電話・FAX・メール・紙帳票中心の受発注をWebに置き換え、確認・転記・問い合わせ対応の負荷を軽減します。
  • FAX受注自動化(AI-OCR)
    既存のFAX受注の仕組みはそのままに、AI-OCRで受注入力作業を自動化します。取引先にはFAXのままでいてもらえる「やり方を変えない第一歩」の中核機能です。
  • パーツセレクター
    図面やBOM(部品表)の情報を読み取り、設計意図に合った最適な部品の選定や、既存の標準部品とのマッチングを自動化します。
  • 納入機器と適合部品の紐づけ
    顧客ごとの納入機器情報と適合部品を紐づけて管理し、問い合わせ対応の負荷を軽減します。
  • 代理店商流・顧客別条件・基幹システム連携への対応
    代理店商流・取引先階層・顧客別価格・部門内承認・既存基幹連携(ERP)など、企業ごとの商習慣に合わせて構築します。
  • 予兆コマース(将来の拡張)
    設備・機械の稼働データとAIの予兆検知を組み合わせ、異常の兆候から保守部品・消耗品の見積・受注につなげる仕組みです。

EC-CUBEでのBtoB・商流デジタル化の実績

国内シェアNo.1のEC構築基盤であるEC-CUBEは、BtoB受発注基盤としても豊富な実績を持っています。
自動見積やロット別価格など、複雑な商流をデジタル化した事例(敷島産業株式会社様)や、基幹システム・倉庫データと深く連携し、大規模な業務効率化を実現した事例(オフィスコム株式会社様)など、企業の独自要件に適合する柔軟性が評価されています。
※ 独立行政法人情報処理推進機構「第3回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査」による

業務整理から伴走する「EC-CUBE Industry Experts」

EC-CUBE Industry Experts

「システムは作れるが業務が分からない」という一般的なシステムベンダーの課題を解決する支援サービスが、EC-CUBE Industry Expertsです。業界実務を知る専門家が、事業の目的から業務課題と実現方針を整理し、システム構築まで伴走します。複雑な業務要件の整理や要件定義から支援が必要な場合の強力な選択肢となります。

工場DXに関するよくある質問(FAQ)

工場DXとは具体的に何をすることですか?

工場DXとは、IoTセンサーによる稼働データの収集、AIによる異常検知、ロボットによる自動化、さらには受発注業務のデジタル化などを通じて、製造プロセス全体を最適化し、競争力を高める取り組みです。単なるツールの導入ではなく、データに基づいたビジネスモデルの変革を指します。

工場DXがなかなか進まない理由は?

主な理由は、既存のレガシーシステムとの連携の難しさと、現場の「現状維持(やり方を変えたくない)」という構造的な壁にあります。特に受発注業務においては、取引先の都合によるFAXや電話の文化が根強く、汎用的なSaaSシステムでは独自の商流に対応しきれないことがDX推進の障壁となっています。

まとめ:工場DXは「やり方を変えない」スモールスタートから

工場DXを成功させるためには、現場や取引先に無理な変化を強いるのではなく、現状の業務フローを維持しながら媒体をデジタル化するスモールスタートが重要です。自社の商流に合わせた業務適応型コマース基盤を活用し、将来の拡張を見据えた着実な第一歩を踏み出しましょう。

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監修

株式会社イーシーキューブ

国内No.1シェアを誇るEC構築オープンソース「EC-CUBE」の開発元企業です。親会社の株式会社イルグルム(東証スタンダード市場上場)とも連携し、戦略立案から構築・運用・マーケティングまでワンストップのEC支援を行っています。これまで数多くのEC構築・改善を手がけてきた知見を活かし、実務に役立つノウハウや導入事例などを分かりやすく解説・発信しています。「ECサイトをどう作ればいいのか分からない」「既存サイトをもっと強化したい」「ECサイトの運営について詳しく知りたい」…そんなお悩みをお持ちの方々に、少しでもヒントとなる情報をご提供できれば幸いです。
※ 独立行政法人情報処理推進機構「第3回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査」による

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  • アフターマーケット事業で実現したいことと、現在の業務課題
  • 仕組み化する業務と、既存運用を活かす業務
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  • 製品納入後も、保守部品・交換部品・消耗品の需要が継続的に発生している
  • 型式・製造番号・個別仕様によって適合する部品が異なる
  • 部品特定や見積・受発注が、人や経験に依存している
  • 顧客・代理店ごとに価格、取引条件、承認フローが異なる
  • 既存の代理店商流や基幹システムを活かしながら、段階的にデジタル化したい