【業界大手がタッグ】イーシーキューブ、Stripeと協業 「決済」を収益生むツールに進化

「決済手数料は『コスト』である」。そのような常識が、エンタープライズECの世界で覆されようとしている。国内でナンバーワンのシェアを誇るオープンソース「EC-CUBE」を提供するイーシーキューブと、世界GDPの1.3%を支えるStripeを提供するストライプジャパンがタッグを組んだ。両社が提唱するのは、決済システムを単なるコストとしてではなく、売り上げを最大化する「投資」へと昇華させる新たな概念だ。決済成功率を極限まで高め、AIによる自律型コマースまでを見据える両社の協業は、企業のデジタル戦略をどう変えるのか。イーシーキューブの岩田進代表とストライプジャパンの平賀充代表に協業の経緯や、戦略などを聞いた。
決済成功率の向上が「最も投資効果の高い施策」
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今回の協業の狙いについて教えてほしい。
- 岩田:
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昨今、多くのEC事業者が、SNS広告やインフルエンサーマーケティング、SEOなどの「集客」には月間数百万円、数千万円を投資している。しかし、苦労して連れてきたお客さまが、最後の「購入する」ボタンを押した後にどれだけ離脱しているか、その「決済完了率」を正確に把握している事業者は驚くほど少ないのが現状だ。
実は今、日本のECサイトでは、決済画面までたどり着いたユーザーの約3割が離脱しているという深刻なデータがある。これは、穴の空いたバケツに必死で水を注ぎ続けているようなものだ。
- 平賀:
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その離脱の最大の原因は、決済の「承認率」と「摩擦(フリクション)」だと考えている。近年、カード不正利用の急増に伴い、本人認証(3Dセキュア)が厳格化された。しかし、古い決済システムを使用していると、正規の優良なお客さまであっても「怪しい」と誤認知されてエラーで弾かれたり、決済時の認証画面が複雑すぎて途中で諦めてしまったりするケースもある。
- 岩田:
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今回の協業の核心は、Stripeの高度なAI不正検知エンジンを「EC-CUBE」に統合することで、この「決済の穴」を塞ぐことにある。Stripeの導入によりライフスタイルブランド企業が98%~99%という極めて高い決済成功率を維持されているほか、別の企業では購入完了率が20%増加したケースもある。これは、広告費を一切増やさずに売り上げを10%~20%底上げできる、最もROI(投資対効果)の高い施策なのだ。
- 平賀:
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Stripeは世界中で年間1.4兆ドル(約220兆円)もの決済を処理している。その膨大なデータから「どのカード会社の、どの種類のカードが、どのような条件下で承認されやすいか」をAIが常に学習し、決済をダイナミックに最適化している。また、不正検知だけではなく、入力フォームの最適化、ワンクリックペイメントなど、Stripeには決済体験を改善するさまざまなソリューションも提供している。EC事業者の皆さまは、Stripeというインフラを「EC-CUBE」に組み込むだけで、世界最高水準の「決済成功率」を手に入れることができるわけだ。
大手企業のこだわりと、柔軟な「金融インフラ」の融合
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「EC-CUBE」は近年、エンタープライズ向けの支援を強化している。理由は?
- 岩田:
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SaaS型のクラウドカートは、確かに手軽で安価だ。しかし、事業が成長し、年商が数十億、数百億という規模になってくると、必ず「標準機能の限界」という壁にぶつかってくる。「自社独自のロイヤリティープログラムを作りたい」「基幹システムとリアルタイムで複雑な在庫連携をしたい」「ブランドの世界観を崩さない体験を構築したい」など、このようなこだわりを実現しようとすると、SaaSでは「仕様ですからできません」と言われてしまう。
「EC-CUBE」はソースコードを全てカスタマイズできるため、ブランドの理想を100%形にできる。クライアント企業の要望に柔軟に対応することができる。
- 平賀:
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その柔軟性はStripeの思想とも完全に一致している。Stripeはただ単に決済手段ではなく、「プログラマブル(プログラム可能)な金融インフラ」だ。「EC-CUBE」が持つフロントエンドの自由度と、Stripeが持つ拡張性の高いバックエンドを組み合わせることで、世界に一つだけの、かつ最高レベルの信頼性を持ったECプラットフォームが完成することになる。
- 岩田:
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以前は「オープンソースはセキュリティや保守が不安だ」という声もあったたが、「EC-CUBE」自体が高セキュリティ化してきたのに加え、Stripeのようなグローバル・スタンダードのインフラをコアに据えることで、事業者は「最も難しい決済部分のセキュリティ」をアウトソースできるようになり、独自のカスタマイズに集中できるようになった。
世界へ広がるStripeというパスポート
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海外展開(越境EC)や、店舗とECの融合(ユニファイドコマース)についてもStripeとの協業で実現できるのか?
- 平賀:
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日本企業には素晴らしい商品があるが、これまでは「現地の決済手段がわからない」「各国の税務処理やコンプライアンスが複雑すぎる」ということが海外進出の大きな壁だった。Stripeを使えば、追加開発なしで世界135以上の通貨に対応でき、各国の複雑な税務処理もStripe Taxにより自動化が可能だ。また、Stripeのプラットフォーム上の越境決済流通総額は前年比60%増加しており、日本企業の海外展開のハードルを劇的に下げることもできる。Stripeというパスポートを持つだけで、日本から世界中へ商圏が広がるということだ。
- 岩田:
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さらに国内市場においても、オンラインとオフラインの境界をなくす「ユニファイドコマース」が必要不可欠になってくる。店舗で端末決済したお客さまのデータをECと統合し、店舗に在庫がなければその場でEC注文として処理し、自宅に届ける。
「EC-CUBE」とStripeの連携により、これからは高度なOMOを、自社のビジネスモデルに合わせて構築できる。人口が減少する日本において、LTV(顧客生涯価値)を最大化するには、場所を選ばない購買体験の提供が唯一の解決策だ。
「エージェンティック・コマース」がECを変革
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業界としても多くの企業が「AI」に注目しているのは間違いない。Stripeとの協業でAI活用はどのように進化していくのか?
- 平賀:
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これからのECサイトは「サイトを訪れて、検索して、カートに入れて、住所を入力する」という今の当たり前が、過去のものになっていくはずだ。例えば、「ChatGPT」のようなAIエージェントに「明日、キャンプに行くから4人用のテントで、レビューが高くて、今日中に届くものを予算5万円で買って」と一言伝えるだけで、AIが最適な商品を見つけ、そのままStripeを通じて決済を完了させる。
AIエージェントがユーザーに代わって決済ルートや価格を自律的に判断し、購買を実行する、いわゆる「エージェンティック・コマース(自律型コマース)」が台頭してくるだろう。Stripeはすでに、AIエージェントが直接決済を実行できる「Agent Toolkit」などの標準整備を進めている。
- 岩田:
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「EC-CUBE」としても、こういったAI活用による変化は最重要視している。先日、AIを用いたパーソナライゼーション技術で、BtoBマーケティングサービスを提供するシルバーエッグ・テクノロジーをグループに迎えたが、これもAIによるパーソナライズを極めるためだ。
AIが「お客さまが今、本当に欲しいもの」を高い精度で提案し、そこにStripeという「一瞬で決済が終わるラストワンマイル」を接続する。「EC-CUBE」の柔軟なアーキテクチャであれば、チャットUIでの購買体験や、動画コマースなど、新しい買い物の形をどこよりも早く実装できる。
「人材不足」をテクノロジーで解決
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業界トップから見る、日本のEC市場についてどのように捉えているか?
- 岩田:
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「人材」が不足している現状だと思う。日本のECの現場は、一人の担当者が「商品企画」から「広告運用」「システム管理」「物流」までを背負わされているようなケースが非常に多い。プロフェッショナルなEC人材は圧倒的に足りていない。だからこそ、私たちは「テクノロジーで人を助ける」必要がある。
複雑な決済運用、不正対策の監視、サーバーの保守といった「人間がやらなくていいこと」をStripeや「EC-CUBE」が自動化し、巻き取っていく。それによって、事業者は本来の「商い」の楽しさ、商品を通じた顧客との対話に集中できるようになる。
- 平賀:
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Stripeを導入することは、世界最高峰のエンジニア数千人を、自社の決済部門として雇うのと同じ意味を持つ。EC事業者の皆さまには、この世界最強の武器を持って、思う存分「商売」を楽しんでいただきたい。「EC-CUBE」とStripeのパートナーシップにより日本のデジタル経済の成長を協力に牽引していきたい。
※本記事は日本ネット経済新聞様より許可を頂き転載したものです。掲載記事原文はこちら
