肉屋アトリビューションから学ぶ、コンテンツアトリビューション分析

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今回は、コンテンツアトリビューション分析の重要性について説明したいと思います。

アトリビューション(attribution)の意味としては、通常「属性」と訳されることが多いですが、attributionのもう一つの意味である「原因」として捉える方が理解しやすいかと思います。
ユーザの軌跡をコンテンツから辿り、コンバージョンの原因を突き止めていくのがコンテンツアトリビューション分析となります。

わかり易いように肉屋に例えて説明したいと思います。

「豚バラ200g下さい。」

晩御飯の献立に悩む主婦の、肉屋(精肉店)での思考パターンを考えてみます。

肉屋アトリビューション

「今日の夕飯は煮魚でも作ろうかしら・・・おっ、いい具合にサシが入ったサーロイン!脂の滴る柔らかいステーキ食べたいなぁ。」

煮魚を作ろうと考えていた主婦の視線は、ショーウィンドウ上段に鎮座する、グラム1,000円のサーロインステーキにいきます。

「ステーキは無理でも、せめて焼き肉を。とはいえ、牛カルビでも結構いいお値段するな・・・」

高まった肉欲はもうどうしようもありません。ステーキの代替になる他の肉を検討しだします。

「すみません、豚バラ200g下さい。」

何も悪いことはしていないのに、半ば申し訳ない気持ちになりながら、すみませんと謝りながら、主婦は、豚バラを注文しました。

注目すべきは、最初、煮魚を考えていた主婦に豚肉を買ってもらうという、態度変容を促すことに成功している点です。
なぜ、このようなことが起きるのでしょうか?
マーケティングの観点から説明していきます。

肉屋アトリビューションとは?

肉屋アトリビューション

最高級肉ゾーン:注目・興味
まずは、お店の前に、立ち止まってもらえないことには始まりません。
誰もが憧れる最高級のお肉で、ユーザに興味を持ってもらいます。

高級肉ゾーン:比較・検討
最高級のお肉を、すんなり買える人はほとんどいません。
妥協点を探りながら、ユーザに比較検討を促します。

普通肉ゾーン:購入(コンバージョン)へ
比較・検討に入ると、ユーザの選択肢は、「買う/買わない」の2択から、「どの肉を買うか」に意識変化していきます。
今回の例では、欲求もある程度満たせ、お財布にも優しい豚肉でコンバージョンしました。

最初に、豚バラ肉だけを気分の高まっていない主婦に見せていたとしても、今日は煮魚するから!とそっぽを向かれていたことでしょう。
ここでは、アシスト効果(間接効果)が働いており、サーロインステーキが牛カルビをアシストし、牛カルビが豚バラをアシストしているのです。

服屋アトリビューション

精肉店に限らず、他の業界、アパレル業界を例にとっても同じことが言えます。
店頭にあるマネキンを見て、このマネキンが来ている服そのまま下さい。と言う人はそれほど多くないでしょう。

服屋アトリビューション

「お、春物入荷しているな。このお店なかなかいいセンスしているな。」ということで、注目・興味を集め、顧客は、ズルズル店内に引き込まれて行き、結局他の物を買ってしまうのです。
注目度の高い商品が、他の商品をアシストするという現象は、身近なところでも実は頻繁に起きていることがわかります。

ECサイトに応用する

これまでの内容をECサイトに置き換えてみましょう。
ユーザのアクセスログを集計したところ、コンバージョンルートが以下のようなパターンだったとします。

コンバージョンルート

上記のデータから、商品Cを売るためには、商品Aのアシストが欠かせないということがわかりますね。たとえ、商品Aの利益率が悪かったとしても、商品Aをやめてしまうと、商品Cも道連れとなり、商品Aの売上減以上に、影響がでてしまうことがあります。

逆に商品Aの販促を積極的に行うことで、店舗全体の売上を伸ばせる可能性もあるのです。

ECサイトをオープンすれば、売れる時代はとうの昔に終わりました。
次々と乱立するEC店舗の中で、ユーザの興味を引くためには、データを武器にして、客寄せのための商品(コンテンツ)と、実利を稼ぐ商品を見極め、それらを意識した戦略が必要です。

またサイト上では、精肉店のように検討から購入までの判断が数秒でなされるとは限りません。ブランド認知を目的とする場合や、自動車や不動産等の高額商材を扱う場合等、目的によっては、数か月から数年といった、長期間のユーザの意識変化を追うことも重要となります。

そういった、データの裏付けが取れるのは、オンラインだからこそできること。
コンテンツアトリビューション分析に基づく施策は、広告による集客と同等か、それ以上の効果を生むこともありますので、データを活用する際の参考にしていただければ幸いです。

ライタープロフィール

中川 仁
2005年4月、株式会社ロックオン創世記に入社。大手SIerでの基幹系システムの開発経験を活かし、ADEBiS、THREe、EC-CUBEといった株式会社ロックオンの主力サービスにおいて、企画開発、要件定義、設計、開発、テスト、運用まで自身も現役として現場に携わりながら、国内チーム、海外チームを統括したプロジェクトマネジメントを行う。

・自動入札ツールTHREe開発及び、リクルート社物件連動型オートメーションリスティングシステム開発。
・広告効果測定ADEBiS開発及び、ADEBiS/THREe連携システム開発。
・EC-CUBEベースエンジン開発及び、大規模ECサイト構築実績多数。
・大手企業プライベートDMP開発。

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